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Re: あかりのオユウギ2 -吸血鬼伝説- 2-1 ( No.56 )
日時: 2008/08/22 17:41
名前: ゆずゆ ◆jfGy6sj5PE (ID: nc3CTxta)
参照: 魔法の使えない魔術師は魔術師ではありません。

二話 [ 夜はいつでも処刑時間-真っ赤なワンピース-]

 時はすばやく進み、時刻は夜の十一時。いわゆる二十三時。とりあえず、閻魔大王様から烏が飛ばされて、『来てほしい』と言う紙を持っていたので——三人そろって、お嬢の力で地獄へと来たのだ。そこでまず、急に色色と飾りのついた大きな釜をもらい、それと同じく白いワンピースに黒いリボンのついた服ももらった。三人とも、だ。しかも色違いの。
 とりあえず着替えてみて、人狩り。罪人の魂を地獄へ送り込む作業のやり方を教えてもらって、今は閻魔大王様とお話中なのだ。

「——ということで、十二時。午前零時になったら、人を狩ってほしい。今日狩る罪人は——一人一人ずつだ。ほれ、顔写真をあげよう」
「で? どうやってその罪人の所に行くの?」

 お嬢が楽しそうに答える。やはり楽しみなのだろうか?
 すると、手はうっておる、と閻魔大王様がくふふと笑いながら言う。

「わしの巨大八咫烏(やたがらす)を乗り物としていくのぎゃ…舌噛んだ。その八咫烏は自動的にそのターゲットの罪人のところまで飛んでいくから乗っていればいいのだ。ほれ、かんじゃるえ…また噛んだ」

 なんともみっともない閻魔大王様からの説明。それにしらけながらも、あかりと、お嬢と、ルナはあっけなく閻魔大王様が用意した八咫烏に乗り、あっけなくそのターゲット(罪人)のところまで飛んでいった。



 ターゲットの名前は亜河 リオと言う今時の男の人らしく、やはり自分よりも年上で、ここ、門蔵(かどくら)町の隣の隣の町。西野(さいの)町のビルがたくさん建っている——都会で、女の人を旧ビルに連れて、性的暴力をしたらしい。そして、間一髪にそこから逃げ出した女の人が、じきじきに交番へかけこんだ。だが、そのターゲットはいまだも逃走中——と言うことで、今からターゲットの魂を地獄へ送る…と言うことらしい。
 それにしても——お盆を過ぎたからだろうか、上空の夏の風は冷たい。そう思っていると、乗っていた八咫烏が急に下に向かって空を泳ぎ始めた。そろそろ、ターゲットの隠れ場に着く頃なのだろう——。



 八咫烏はちゃんと地面にあかりを降ろし、それから毛づくろいを始めた。待っていてくれるらしい。
 あかりはとりあえず、そのターゲットの隠れ場の、廃工場と思われる鉄骨などが山積みになっているところで、街灯のオレンジ色の光だけが頼りで、そして、それを頼りにあかりは廃工場を歩いた。そして——見つけた。髭が生えてて、髪は茶髪で根元は黒く、顔はガリガリ。あきらかに、逃亡者の姿だ。
 とりあえずあかりは声を掛けてみることにし、小さな声で言ってみた。

「ごめんくださーい」

 鉄骨にもたれかかっていたターゲット。赤河は、あー? と、少し怒り気味にそう言って、目を開けた。それから、鎌を持ったあかりに驚いてから——逃げて逃げて逃げまくったと思われる、その疲れきった体を重たそうに持ち上げ、立つ。それからあかりに近づく。

「なぁにお嬢ちゃん? そんな物騒なもんもってー」
「や、そのー赤河さん? 顔、顔近い…近い近い近い近い」

 近づいてくる赤河を全力で避けるあかり——だがどんどんと赤河はあかりに近づいてくる。やめろやめろ離れろ離れろ。
 さすがあっち系の罪を背負った罪人だ…やはり自分も誘っているのか? 遠慮なく断るけど。
 とりあえずとして、あかりはきっぱりと変態罪人に言ってみた。

「あのね、今日があなたの命日となるんです。というのは、今日あなたが死ぬから。イコール——わたしがあなたを殺すんです」
「……どうしたのお嬢ちゃん? 何いってのあっははぁ」
「人事じゃないですよ。わたしは死神。あなたの魂を狩るために地上に舞い降りた死神——その名も死神戦隊カルンジャーの隊員の一人、死神ブルーです。はい、ブルーと呼んでくださいね」

 前々からお嬢に言われていたこと。
 『いい? わたしたちは、《死神戦隊カルンジャー》として働くのね。わたしが《死神レッド》で、あかりが《死神ブルー》、そんでルナちゃんが《死神イエロー》——わかった?』
 本当に言ってしまったが、仕方のないことなのだろうか。
 とりあえず鎌をぎゅっと握り締めて、あかりは赤河の胸に振り下ろしてみた。

「ひぃやぁ!」

 ギリギリのところで赤河はくるっと身をひねり、それをかわす。それからあかりは容赦なくどすどすどすどすと鎌を振り降ろしていき——ふちまで赤河を追い詰める。
 それからにこっと、天使の様な笑い方をして——鎌を赤河の胸に振り下ろした。
 ぶしゅうっ。
 それから、また振り下ろす。
 ぶしゅううっ。
 それから、また振り下ろす。
 ぶしゅううううっ。

「あ…あっははははははははぁ!」

 いつの間にか白いワンピースは赤く汚れてて、もちろん鎌も赤かった。
 真っ赤になっていた自分を見て、あかりは笑った。死神(あかり)は、笑ってしまった。



 八咫烏の背中で寝ていたようで、どうやって地獄に来たのか分からなかったけど、ルナとお嬢の赤く染まった白いワンピースを見て、ほっとした。
 それから、お嬢の能力で家に帰って、三人でまとめてお風呂に入った。正直傷だらけのルナの背中には驚いたけど、すぐになれた。これから、毎日こんな日が来るのか…と、そう思うと、また笑みが零れる。その笑みは、狂った笑みじゃなくて、普通の、極普通の、笑み。