ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: あかりのオユウギ2 -吸血鬼伝説- 弐-弐 ( No.58 )
- 日時: 2008/08/23 12:15
- 名前: ゆずゆ ◆jfGy6sj5PE (ID: nc3CTxta)
- 参照: 魔法の使えない魔術師は魔術師ではありません。
三話 [ 月人形-たくさんの傷痕- ]
罪人を狩り始めて二日。とりあえず、眠れないのでテレビをじーっと見ていたルナルドール。通称ルナ…だったり、月子(つきこ)と言うあだ名もつけてもらったのだが——自分的には月子が気に入っている。だからあかりにも、『月子と呼んで下さい』といったり、『月子』と言うあだ名の親のお嬢にも『月子と呼んで下さい』といった。すると何と思ったか、急に笑いだすのだ。お腹をかけて。——まったく。
というか、あの二人と居るとどうも調子が狂う。
笑えない失敗をしたって、笑う。
大切なものを壊したって、『しょうがないね』と言って終わらす。
なんだか——色色と付いて行けなかった。
実際に、わたしが電子レンジに卵を入れてどかーんとなった時も、何も言わなかった。ただ、卵だらけになったわたしを見て笑っていた。
そして、お嬢が大切にしている機械。『フルムーンキッド一号』というのを蹴って壊してしまった時も、『あっはは』と言う笑いだけで終わらす。なぜ、なぜそんなに簡単に許すのだろう。
「……姉様は、違った」
まだわたしが小学校三年生くらいの時。姉様からのいじめは始まった。家族皆で夕食を食べているとき。急に姉様の足がわたしの足をふんだ。その頃の姉さんの歳はわたしとあまり変わらなかったのだが、姉様のはいている赤い靴はハイヒールで、普通の靴をはいていたわたしの足を容赦なく踏み潰した。おかげで足は真っ青になってしまっていた。
◆
『ねえさまがあしをぐりぐりーって……かあさま、いたいよぅ。あしが、いたいよぅ』
もちろん母様にいいつけました。だけど、母様に叱られた姉様は、わたしに仕返しをしてきました。寝ているわたしの首を掴んで、死ぬ直前まで首を絞めて締めて締めて締めて——姉様の手形が首に残ってしまったので、ずっとスカーフを首に巻いていました。
それから、わたしのぬいぐるみをベランダから捨てたり、母様がおやつとしてもって来てくれたショートケーキをわざと落として、踏んで、そして、わたしにたべさせました。もちろん無理やりです。
姉様は残酷だった。とても、すごく残酷でした。歳を取るとそのいじめのレベルも上がって、最後にはわたしを椅子に拘束して、できるだけ甚振って、やれるだけ虐げて、眠る。とても、それはとても、残酷なものでした。ですが、いつからか姉様の攻撃の痛みが伝わらなくなったのです。前はあんなに痛かった蹴りの痛みも感じなくって——そしてまたいつからか、笑えなくなりました。泣けなくなりました。感情が——なくなってしまいました。姉様はそれに気づきもせず、いつも通り蹴る。殴る。叩く。わたしが泣かないことに気づきもせず、踏む、ひっぱる、つねる、刺す。
姉様は、わたしをいじめることに快感を覚えていました。
ですが、何もいえません。痛みも感じなくって、感情がどこかへ消えて、ぼろぼろになってしまったわたしには、何もいえませんでした。
姉様は、悪魔です。姉様は、鬼なのです。心の中に鬼を飼っている鬼。姉様は、きっとこの世で最高に恐ろしい鬼でしょう。
だから、殺しました。八つ裂きに。姉様(主人)は、わたし(ペット)に殺されたのです。自業自得だと思いますがね。
◆
気づいたら、テレビは消されていて、いつのまにか寝てしまったようだった。しかもタオルケットが首までかけてあって、上を見たら電機がついていて——後ろを見たら、そこには笑顔満開の二人の姿があった。