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Re: あかりのオユウギ弐 -吸血鬼伝説- 弐-五 ( No.65 )
日時: 2008/08/28 14:39
名前: ゆずゆ ◆jfGy6sj5PE (ID: nc3CTxta)
参照: 魔法の使えない魔術師は魔術師ではありません。

六話 [ 現れた力-LIVE- ]

 その夜のことだ。お嬢は急に『バーベキューがしたい』と言った。そしたらあかりと月子は急いでバーベキューの準備をして、さっそくそれを始めた。
 それにしても——自分は病院から抜け出してきて大丈夫だったのだろうか?


 
 星なんて雲に隠れて一つも見れない夜。

「はふはふ……んーん! おいひー」

 お嬢はもう焼けたと思われるウインナーを焼肉のたれにつけて食べ、言った。するとそれを聞いたあかりが、申し訳なさそうに言った。なにしろ、野菜がなく、バーベキューらしいバーベキューができなかった為だ。あかりがこんなにしょんぼりするなんて…それは、お嬢がする始めてのリクエストで、あかりもすごく嬉しそうにしていたけど——、

「大丈夫よーあかり。んーウインナーってこんなに美味しかったっけ?」
「うー」
「ほれ、今日は楽しもうじゃないか! 初めての焼肉——霊月はレベルが上がった!」

 そうやって言うと、あかりは笑う。それから、じゃあわたしもと言ってお肉に手をつける。
 そしてお嬢は、ふと月子の方を見た。そこには月子がキャベツを兎の如くがじがじがじがじとかじっているではないか! すぐさまお嬢は月子に向かって言う。

「月子? ウサちゃん見たいにキャベツだけ食べなくてもいいのに」
「きゃべつと、やきにくのたれはものすごく合いますからね」
「えー」

 どうやら月子はベジタリアンらしい…。
 それから、昼よりも曇っている空を見て、お嬢はキャベツをかじっている月子と、お肉を食べているあかりに向かって言った。

「焼肉セットを家の中へ。あかりと月子も家に居なさい。出てきたら死んじゃうから」



 鉄には火を。火には水を。水には雷を。雷には銀を。銀には金(きん)を。金(きん)には金(かね)を。金(かね)には人を。人には——絶望を。
 吸血鬼なら、誰でも知っている言葉。吸血鬼社会を左右させる一族の娘の名を現している。ここで分かっているのが、鉄と、火。桂月と霊月。
 順番などは関係ない。○には○を。その○を二つあわせると、絶望的な攻撃となる。例えば、水に電気を通してみると、電気は水と一体になり、その電気入りの水に触れたものは感電する。
 この世は弱肉強食だ。弱い奴は殺され、最後には一番強いものがこの世の頂点に立つ。——それは、吸血鬼の世の中のことなんだけど……。



「ほーら、来た」

 雲の中で光る何か。結構大きいと見た。
 お嬢、いや、戦っている時は霊月と呼ぼう。霊月は、そう言って、楽しそうにその光る物体を見た。見た見た見た見た見た——物体は、落ちてくる落ちてくる落ちて——落ちた!
 ずどぉん。
 鉄が、薄茶の鉄が霊月が立っているところに落ちる。霊月はそれをギリギリで横に交わし、笑った。鉄は三十メートルくらいで、当たったら即死だろう。なのに、霊月は笑っていた。吸血鬼社会は弱肉強食。その弱か、強かを今桂月と霊月は決めようとしている。
 霊月が腰に手を当てて、落ちてくる無数の鉄を鑑賞していると、落ちてくる鉄を見たあかりが窓を開けて大きな声で霊月に吐き捨てる。

「お嬢!? ちょっと……て、鉄!? 鉄が落ち——」
「窓を閉めないと雨(鉄)が入ってくるぞ。とりあえずこの雨(鉄)は家を避けるからな。だが窓が開いてると鉄が入ってきちまう」
「ちょ、性格変わってないっ!?」

 違う。霊月は真剣になっているだけだ。

「真剣になっている——それだけだ。早く窓を閉めてないと本当に死ぬぞ?」

 言っていると、あかりがあけていた窓に向かって、一つの鉄が向かってきた。何と言う反射神経か、あかりはすぐに窓を閉め、鍵をかける。すると、その窓に向かっていた鉄はギリギリの所で垂直に下に落ちる。
 それを見てから、霊月は大きな声で吐き捨てた。

「鉄なんかさぁ、落ちる前に溶かせばいいんだよ」

 それから、左手の人差し指を鉄が振ってくる空を向けて。

「ファイヤフライナイト・ファイヤーナイト(蛍の夜・炎の騎士)」

 刹那。
 大量の蛍が空中から現せ、その蛍がどんどん集まって、形を変えて——赤く光る騎士となった。