ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: あかりのオユウギ弐-怪物の町- 参-壱 ( No.99 )
- 日時: 2008/09/10 18:14
- 名前: ゆずゆ ◆jfGy6sj5PE (ID: nc3CTxta)
- 参照: 魔法の使えない魔術師は魔術師ではありません。
二話 [ 赤いまなざし-霊月- ]
今日も暑かったから、あかりと月子とお嬢は涼んでいた。
あかりと月子はアイスを食べていて、お嬢は下着で扇風機の前に立っていた。だが下着と言っても、上は良く小さい子供が着る様なあの白い『シャツ』で、下は黒のスパッツを上から着ていた。家に男がいないから良しとしたあかりは、お嬢の格好に無視してアイスを食べていた。
「あうっ!」
あかりが声をあげる。それから口の中に入れていたアイスを口から出し、何か冷たそうに言った。
「歯が……」
「歯がしみる奴ねぇ、分かる分かる」
名前は知らないらしいが、扇風機に向けていた顔をあかりの方へ向けて言う。それから月子がケロッとした顔であかりに向かって言う。
「どうして感じるんですかね?」
それは、嫌味らしくない嫌味。
「わたしはしみないから」
◆
少ししてから、お嬢が霊月に変わった。
それから何も飾りが付いていない白のシャツを真っ黒のシャツに着替えてから、スパッツの上に黒のソングスカート、黒のニーソックスを履いて、黒の日傘を持って外へ出て行った。あかりは『わたしも行きます』と行ったが、霊月は『来るな』と言って靴下のまま家の前にある一本道を歩いていって、それからどんどん見えなくなった。
あかりは何も考えず、霊月がどこへ行くのかも分からず『わたしも行きます』と言った。霊月はそれを知っている。だがらこそ、『来るな』と言ったのだ——。
◆
「こんにちわ」
オレンジ色の髪でポニーテールの少女が曲がり角から現れてそういった。霊月は日傘の中から顔を出して、その少女に言う。
「もう一人はどうした?」
それは、その少女のことを知っている様な言葉。
「貴方の後ろに居るわ」
霊月はゆっくりと後ろを向いて、後ろにいたオンレジ色の髪でツインテールの少女の方を見た。それから霧になって消えて——またツインテールの少女の後ろへ霧から姿を人にしてから、二人を睨む。するとツインテールの少女がポニーテールの少女の方へ走って行ってまたこちらを向く。そして言う。
「……お姉さんも太陽を浴びなよ。気持ちいいよ?」
「すまないがわたしは太陽が嫌いでねぇ」
霊月の言葉にポニーテールの少女が怒り、霊月に向かって履き捨てる。
「だからわたしたち(真月)をいじめたんだなっ!?」
霊月は笑って答える。
「ああそうだよ。悪いか? 太陽を好む吸血鬼などこの世に存在しなくていいからな——」
「吸血鬼をいじめる吸血鬼だってこの世にいなくていいんだ」
「だがな、お二人さん。他の家の者は何も言わなかった。ましてや皆それに賛成した! これでも悪いか?」
「あぁ悪いね。お姉さんたちが主犯のいじめのせいでどれだけ真月の血を引くものが死んだものか!」
「死んだ? 死んだと言うより『自殺した』だろ? わたしたちはただたんに悪口を言っただけだ」
終わらない口喧嘩。
「その言葉一つでどれだけのわたしたちの家族が死んだと思っている!? 父さん母さん姉さん兄さん——どれだけ居ると思っている!?」
「自殺した奴が悪いんだろ?」
「おっ前……絶対、絶対殺してやるからなっ」
少女たちはそう言って霊月を睨む。霊月は少女たちに向かっていった。
「フラウンホーファにスペクトルだっけな? お前たちはわたしがこの手によって眠らせてあげよう。永遠にな——それにお前たちの言っていることは所詮子供の考え。少しは自分たちの方も悪く思ってみたらどうだ? ん?」
フラウンホーファがどっちでスペクトルがどっちだか分からなかったが、霊月はまた霧となって消えた。
霊月が消えた後、ポニーテールの少女が静かに涙を流した。
「あいつぅ! 絶対、許さない——」
「フラウン。そんなに思っちゃダメだよ。もうすぐなんだから——地球が消滅するのは」