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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 島子の夏 ( No.112 )
- 日時: 2008/12/19 18:09
- 名前: 夢月 ◆F1AECCCN32 (ID: NbE37YYW)
- 参照: この広大な空の下 全ての国々の子供たちが 戦争—— その言葉を口にすることがなくなるのを願います……
6
白い光は黒い物体に包まれる感覚と比べて、どこか優しいものだった。目を開けてみると、そこは不思議な空間だった。灰色の空、地面は草が生えている。——ただし、枯れていた。
「ここは、女狐の居る空間」
瑞は、ぺろっと舌を出し小さく肩を竦めて見せた。しかし伊織はそんな余裕は無く足は振るえている。彼女達は、何回もこのような空間に行った事があるのか無表情だ。伊織の隣に居る勇は、僅かに手が震えている。そんな様子に気付いた瑞は、「大丈夫だ」と言うような視線を送った。
「大丈夫だ……。だから、落ち着け」
深く深呼吸をする。そして、「大丈夫」——その言葉を心の中で反芻した。ようやく心が落ち着いたのか、伊織は歩き始めた。その時……
「さっきはよくも……!!」
黒髪の少女が仁王立ちで立っていた。鋭い眼光に、伊織と勇は怯えてしまう。苑は、地面を蹴って勢いよく飛び上がる。苑は3メートルも飛び、黒髪の少女に蹴りを入れた。そして、次々に攻撃を繰り出す。黒髪の少女は、痛くも痒くもない……そんな表情をしている。
「前回戦った時より確実に強くなっている……。まあ、あの時は私が人間だったせいもあるけど……」
瑞が、ぼそっと小さく呟いた。勇は、思わず「え?」と聞き返す。瑞は、手を額につけて首をふった。
「聞かれちまったか……。実は私らは前世であいつらの友人だったんだがねぇ。あの女狐、気が狂ったのか墓を作ってやった恩も忘れて私達ごと殺してしまったのさ」
伊織と勇は目を丸くした。
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