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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 島子の夏 ( No.129 )
- 日時: 2009/01/31 20:01
- 名前: 夢月 ◆F1AECCCN32 (ID: NbE37YYW)
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瑞のその言葉には威厳があった。懐かしい、生前にも聞いた口調。容姿は代わっていたが口調は変わっていなかった……。女狐、とかつての友に言われた少女は、思い出す。楽しかったあの日、家に帰るとけられ殴られた日々。そして、自分は死に、この想いを誰かに伝えたい。この心が残り、祟りとなって人々を脅かす。気付けば何人もの人を殺していった。そして、今ここで祟りは終わる。きっと、彼女達の仲間が来るのだろう。もっと大勢の。今や、少女は無気力だった。抵抗する気力も無い。いや、仮に抵抗していたとしても失敗に終わっていただけだ。少女は降参というように、両手を挙げた。
「終わ……った」
「みたいだな……」
二人の少年の言葉には安堵感があった。これまでのことは、たったの数時間だろう。もしかしたら、1時間たっていないのかもしれない。しかし、目の前では戦いが起こっていた。
「ありがとう」
瑞が小さく呟いたのを聞き逃さなかった。こちらもお礼を言おうとした時、白い光がこちらを包む。もしかしたら、元の世界に帰れるのか。けどまだお礼を言ってないじゃないか! 伊織は心の中で叫んだ。言おうとしても、光がどんどん自分達を包む。そして、とうとう瑞達も見えなくなってしまった。
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