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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 島子の夏 ( No.24 )
- 日時: 2008/10/27 17:23
- 名前: 夢月 ◆F1AECCCN32 (ID: NbE37YYW)
5
伊織は言葉をなくした。あんな元気なおじいちゃんが? 紗江子は不安そうに眉を八の字にさせた。部屋には不穏の空気が流れ出す。伊織は、自分を落ち着かせようと、大きく深呼吸をした。しかし、不安は伊織の脳内で、渦巻いていた。
その夜のことだった。夕食を済ませると伊織はすぐに電話がある廊下へ向かった。受話器を素早く取り、部活の後輩の井上乃々の電話番号をかける。
「もしもし」
少し、伊織の声は弱弱しい声だった。受話器の向こうからもしもしと返事が来るのはそう、時間はかからなかった。伊織は、言いたいことを頭の中でまとめてから息を飲んだ。
「あのさ、お前の親戚死んだんだって?」
「うん……。最近さ、葬式多いよね」
思った以上に、乃々の声は重々しく暗かった。伊織は頭をかいてから、息を漏らす。
「なんかさ、原因ってもんがあるのかな」
沈黙が訪れる。伊織は行ったことを後悔したと言わんばかりにため息を漏らした。その間はたったの数分間だったが、伊織は永遠のように感じられた。そして、ようやく受話器の向こうからかすかに声が漏れる。
「原因って……祟りとか?」
相手は笑いながら言った。伊織はその言葉に反応した。しかし、冗談だとわかると少し笑いをあげて、ありえないと自分を諭した。向こうも、冗談とわかってくれたみたいだと安心した。
「じゃあね!」
しばし、会話をすると伊織は電話をやめた。部屋に戻っても、伊織は祟りのことを考えていた。
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