ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 島子の夏 ( No.31 )
日時: 2008/11/05 18:21
名前: 夢月 ◆F1AECCCN32 (ID: NbE37YYW)



伊織の状態は大変危険な状態にあった。病院の待合室では、緊迫な空気に包まれている。その、緊迫の空気は、手術室の扉が開いたことで打ち破られた。皆が皆、白衣に身を包んだ医者を見る。

「む、息子は……」
紗江子は、恐る恐る聞いた。口元が微かに震えている。
「助かりました。退院できるのは先の話ですが、少しだけ歩くことは出来ますし散歩くらいならできます」

紗江子は、ほっと胸をなでおろした。先ほどまで青白かった顔が嘘のように頬が赤い。紗江子の他にも数名が胸をなでおろしていた。緊迫した空気が本当に、なくなった。

伊織が目覚めた時刻は夕方。伊織はのそのそと起き上がると、手に黒いあざのような者があることに気付いた。あざは、まるで顔のような形をしていた。夕暮れの光が、あざを照らす。真っ黒で、不気味なあざを。伊織は、少しだけ嫌な予感を感じ始めていた。あざのように真っ黒で不気味なことが起きると——。