ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 島子の夏 ( No.36 )
日時: 2008/11/09 11:08
名前: 夢月 ◆F1AECCCN32 (ID: NbE37YYW)



「けどさあ、お兄ちゃん」

今の病室には、伊織と駿の二人だけだった。二人はもう、帰ってしまった。駿は、足をぶらぶらさせながら、尋ねた。

「ん?」
「なんで、その真っ暗な所に居た時振り替えらなかったの?」
伊織は一瞬、心臓が飛び跳ねたような思いをした。駿は、伊織のことを子供独特の純真無垢な目で見つめた。伊織は、話したらまた笑われると思っていたが、話さなければ話さないで、心が痛みそうだったので、口を開けかけた。

「なんかさ、跳ねられる直前に、振り返るなとか声がしたんだよ」
駿は一瞬口を開けたまま、ぽかんとしたが、また笑い始めた。伊織はむっときたが、頭を軽く小突くだけで、我慢した。しかし、それでもまだ駿は笑い続けている。
「それって、三途の川じゃないの?」
「馬鹿、三途の川は川に渡っちゃ駄目なんだぞ。俺の体験したことは、川もないし、振り返っちゃ駄目っていうルール」
駿は、また笑い始めた。
伊織は、また軽く小突いた。