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Re: 島子の夏 ( No.43 )
日時: 2008/11/10 20:58
名前: 夢月 ◆F1AECCCN32 (ID: NbE37YYW)



島にある森の奥深く、二人の少女……いや、片方は大人だが、二人の女が話していた。話している、というよりは少女が怒りをぶつけているという様子だった。

「あの、女狐。また祟りをおこそうってのかい……」

淡い水色のワンピースを着た少女は、顔に似合わない口調で白い羽衣をまとった女性に怒りをぶつけていた。白い羽衣をまとった女性は、にやりと不敵な笑みを見せる。少女は、それを見て少しだけ頬を膨らませた。

「あの子は幸せな人を見るとむかつくのだわ。また、あの子を封印させるの? ああ、わらわに助けを求めるのなら、ご飯をおごってね」
白い羽衣をまとった女性は、少女をなだめながら話した。少女は、まだどこか腑に落ちない様子だったがすぐに、開き直ったように頬を膨らませるのをやめて宙に浮いた。
「苑、あんたに助けを求められる筋合いはないね。そんなもの私がとめてやるさ」
強気な口調で少女は言った。白い羽衣をまとった女性……いや、苑と呼ばれた女性はため息をついた。

「ところで、なんで水色ちゃんはあの伊織って少年を助けたのかしら?」
「……、ただの気まぐれさ。助かる見込みがあっただけ。それに私はあいつの元ご先祖様だからね。しかし、水色ちゃんはやめておくれよ。瑞という名があるんだからさ」
水色ちゃん、もとい瑞はまた頬を膨らませた。

「けど、今はわらわも貴女も地上に残る有害な霊を封印する者よ。人間をおおっぴらに助けないように……」
苑は、瑞にするどい視線を浴びせた。瑞はその視線に睨み返すが、すぐに青空へと視線を追いやった。つられて、苑も青空を見る。しかし、その青空に少し嫌な雲が覆いつつあった。

「わかってる。私らは、影から人間を守るんだ。
 ああ……また夕立が始まった」
「そうだね」

瑞が、空を見上げるとぽつぽつと水が降ってきた。
雨が少し強くなってきたと同時に、二人は空へと消えた。