ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 島子の夏 ( No.86 )
日時: 2008/12/08 18:33
名前: 夢月 ◆F1AECCCN32 (ID: NbE37YYW)
参照: 少し腹黒いめんどくさがり屋の十二歳です。現実ではうるさいのは苦手ですね、はい……;;ファンタジーが死ぬほど大好きですv



「……とうとうあいつが動き始めたようです」
「そのようですね。私は閻魔大王の身ですから、仕事……人の魂を正常な輪廻に戻すことを放棄することは出来ませんし……貴女が行っても女狐を止められやしまい」

丸い小さな水晶に、二人の少年が黒い物体から逃げ惑う姿が見えた。悠は、その水晶を手に取り優しくなでる。瑞が、悠の姿をじっと見つめた。その間30秒。その30秒が過ぎた時、後ろからシャン、シャン……と鈴のなる音がした。

「悠様、どうしましょう……」
今やってきたばかりの苑が胸に手を当てて不安気に尋ねた。苑のいつもの怪しげな美しさとは違い、儚げな華のような美しさだ。目には涙まで浮かべている。きっと、それくらい緊急事態なのだろう。
「……あの子達を利用しましょう」
苑と瑞は「え?」といわんばかりの表情で首をかしげている。

「あの子達を利用するのです。あの子達から、力を分けてもらいましょう。……生きる力、生気を。私も出来るだけの人数をそちらに向かわせます」

二人の首筋から嫌な汗がたれる。人から生気を奪い自分達の力にすることは難しいことだ。二人は一回も成功がしたことがない……というよりやってみたこともない。悠の目は迷いがないものだった。

「わかりました。それじゃあ、行こう……苑」
「わかった。けど……女狐もしつこい人。親に虐待されて死んでからもう何年たつのかしら。たしか女狐が死んだ日、わらわ達はこの青空の下でお墓を作っていたわね」

二人は無表情のまま現世へと続く道へ歩いた。