ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 島子の夏 ( No.91 )
日時: 2008/12/10 19:00
名前: 夢月 ◆F1AECCCN32 (ID: NbE37YYW)
参照: 少し腹黒いめんどくさがり屋の十二歳です。現実ではうるさいのは苦手ですね、はい……;;ファンタジーが死ぬほど大好きですv



森が森ではなくなった——。
伊織は思った。走っても走っても景色は変わらない。この森は小さいはずだ。それなのに、世界の色が緑のままだった。隣では勇が息を切らしながら走っている。伊織が立ち、走っていることにも疑問は持たずに。

「あ、あの黒い物体なんなんだよ!?」
勇が、後ろを指差し言った。伊織は、後ろを振り返る。やはり、黒い謎の物体が居た。追いつかれたら何が起こるかわからない、だから逃げているのだ。黒い物体と伊織たちとの距離は、7m……つかず離れずといったところだ。一瞬でも緩んだら、追いつかれてしまう。伊織と勇は、精一杯腕をふる。しかし、体力も限界に近づいている。かれこれ30分は経つだろう。
「もう無理だ……!」
「けどさ、あの黒い物体につかまったら殺されるかもしれないんだぞ!? それになんでお前は走ってるんだよ!」
「知らねえよ!」
人間の本能なのか。事故にあった自分の足が自由に動いた。それは奇跡だった。その奇跡は、何故だろうと考える暇も無く動き続けている。

「こうなったら別々に行動しよう!」

伊織の唐突な提案に、勇は思わず間抜けな声を出す。こんな状況で二手に分かれたら危険じゃないのか、そんな考えが頭をめぐる。こんな状況だからこそ二手に分かれた方が、片方は確実に助かる、という答えに結びつくまでは時間がかかった。
「わかった。俺は左に行くから」
勇は、左に曲がった。それを見て伊織は、逆方向の右へ曲がる。
二人の頭の中には不安が入り混じっていた。