ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ぼくらのいるばしょ ( No.11 )
- 日時: 2010/01/17 11:02
- 名前: 朝倉疾風 (ID: ikrpTGuK)
やっつける・・・・・別に、柊をとあーって倒す為に来たわけじゃない。 そんな事をしにきたわけじゃない。
「マコトが怒ってたよ。 柊の考え方に」
「でしょうね。 僕殴られかけましたもん」
「・・・・・・・柊は、ある意味では楓よりも、俺よりも異常だね」
柊が振り返る。 笑っていた。
「ホントに?」
「え?」
「ホントに・・・・・・・・そう思いますか?」
あー、ダメだこの子。 ただの『憧れ』じゃすまなくなってる。
「異常を求めて自分で自分を破壊するなんて自傷行為だよ。 タヒにたいじゃなくて異常になりたいだからね」
俺らより壊れていて、俺らより危ない。
「異常な人に異常って言われて、なんか嬉しいです。僕もそうなれたんだ・・・・。 そうですよ、普通なんて嫌いです。 面白くもなんともない。 でも、僕の家族はあったかでほのぼのしていて、事件なんて起こらないような家庭だったから・・・・・壊したんです」
満足そうに笑う柊を、改めて怖いと思った。
いや、恐怖とかじゃなくて、その精神が。 繋ぎ方を間違ったのか、そのまま脱線している。
「ユーさんとは、多分これで最後になります。 今ここでユーさんを殺.しても、僕はあまり乗り気じゃないです」
「どうして? 俺を殺.せば柊は捕まらないのに」
一時的だけど。 ここに来る前にメジロさんに電話したからなぁ。
「僕、今思うとユーさんの事、そんなに嫌いじゃなかったのかも知れません」
「そう?」
「はい。 ・・・・・・・好き、っていうのも違うと思うけど」
俺の心に迷いが生じる前に、ここを立ち去ろうと思った。
「もうすぐで警察が来るから、大人しくしときなさい」
「はい。 実はさっきから待ってるんですけど・・・」
遠くでサイレンの音が聞こえ、赤いランプが見えた。
柊が肩をすくめて、
「ユーさん、最後に、ちょっと」
「ん?」
腕を掴まれたから、一瞬身構えたけど、
・・・・・・・・。
・・・・・・・・。
キス、された。
えええええええええええええ? 何でぇ?
わけも分からず、声もあげず硬直。
唇を離され、
「ユーさん、宮岡くんには謝っといてください」
「・・・・・・・・わかった。 けど何で今キスした?」
「ん、何となく。 別れ際ですから」
そう言って、軽く手を振って柊がパトカーの方へ歩き出す。
「・・・・・・・何だかなぁ」
頭を掻きながら、俺は元の場所に戻る。
戻ろう。
あの場所に。
平凡と異質の真ん中に置かれている、
俺の日常に。