ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ぼくらのいるばしょ ( No.2 )
- 日時: 2010/01/10 17:07
- 名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)
マコトが精神科を退院したのは、監禁生活が終わっての3日後だった。 俺らと会うのが嫌だと、メジロさんが止めるのも聞かずに帰って行った。
楓はトモを探しに行くと言い張り、暴れていたけど何とか病院内に留まったわけで。
正直マコトに会うのは絶対に避けたかった。
昔からマコトだけは意志が分からなかった。 笑っているけど、心の中では何を考えているのか分からない。
ブラックホールみたいに感情を吸い込んで、コピーしているみたいだった。
「あ ぎぎぎぎぃぃぃぃ」
青の奇声で落ちかけていた思考と瞼が開く。
「青?」
「ぎぎぎぎいいいいいいいいぃぃ」
隣で焦点の合っていない目と、シーツを噛んでいる青がひどい歯軋りをしていた。
「大丈夫だから」
理屈もなく、大丈夫を繰り返す。 何が大丈夫なのか判らないけれど。
「・・・・・・・裕也」 おさまった。
「なーに?」
「音量、上げて」
これ以上上げて鼓膜は大丈夫なのかと心配したが、本人がいいって言うのならいいんだろう。
アイポッドの音量を最大にしてみる。 反応は薄かった。
同じベッドで、同じ布団で、同じ向きで寝ているのに昔とは違う感覚がした。
青が眠ったので、俺も目を閉じてみる。
思い出すのは、桜崎のこと。
楓は自分を見失って、マコトはバッドで殴られて、青は関節折られて嘔吐して、俺は・・・・・・何されてたんだっけ。
外で鳴る雷よりも酷く響いた悲鳴と不協和音の残像。
アイツが、何でだったかは分からないけど外に出て行ったすきに桜崎は来てくれた。
長い髪から雫をたらして、息をきらせて。
唯一自我を保っていた俺の前で倒れこむようにして座った。
俺を抱きしめて、強く、強く。
ラーメンまた、食べに来いよって。
それが俺と桜崎の最後の約束だった。
足が折れている楓を背負って、嘔吐がおさまった青の手を握って、マコトを起こそうとしたときだった。
「
」
とんでもなく、嫌な音。
続いて、何かが倒れる音。
楓が桜崎から落ちた。 足を引きずって、その場にあったナイフで桜崎の足を刺すのが見えた。
何があったんだろう。 最初にそう思った。
青の泣き叫ぶ音と、桜崎の音、何かが壊れていく音がした。
目を覆わなければならなかったのに、その余裕がなかった。 恐ろしくて涙も出ず、ただ耳鳴りがした。
桜崎が動かなくなったのと同時に、犯人が帰ってきた。
物凄く大きな声で何かを怒鳴り、叫んで、
生ぬるい液体が俺にかかってきた。
それが血だと分かったのは大分後だけど。
トモくんはどこ。
楓はそう呟いて、倒れた。
頭が痛くて吐き気がして、苦しい。