ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: ぼくらのいるばしょ ( No.5 )
日時: 2010/01/13 16:53
名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)

息苦しさに目を覚ますと、朝だった。
時計を見ると余裕で二時間目が始まっている時間帯。
「うわーお」 
遅刻常習犯は避けたい。 充電がすでに切れている青を起こす。 一発頬を殴られたけど、二発目をかわして青の頬をつねる。
「青、起きて。 制服着なさい」
「・・・・・・とりゃー」
「学校サボるの禁止」
「・・・・・・・ざけんな」
フザけてません。 
ゆるゆると時間が過ぎていくため、文句を言う青の服を脱がせて着替えさせる。 大きな人形みたいだ。昔から。
朝ごはんなんて摂らずに寝ぼけ眼の青とノタノタアパートから出る。
学生の姿なんて全く見当たらない。
特に何の障害もなく青のペースで走って学校に到着した。
あららもう二時間目の途中じゃないかー。 不気味なほど学校がしんとしている。
「・・・・・・学校、誰もいない」
「いやいや、いるから」 半ば呆れ口調で否定する。
イヤホンを耳に詰めながら青が靴を脱ぎっぱなしにする。 おい。
「この非常識さは母親に似たのかねぇ・・・・・・」
靴を拾いながら青の靴箱を探す。
「青、上靴履きな」
「・・・・・・ん、なんかアレだな。 裕也、お母さんみたい」
「保護者ですから」
「違うよ。 世界だよ」
はいはい分かりましたっと。

俺が履き終えるのを待って、二人で階段を上がる。
さすがに静かだ。 青の嫌いな静寂。
「充電あんまできなかったろ?」
「・・・・・・・ダイジョブ。 もう一個スタンバってる」
はあ、何で妙な所で略すんだろう。
案外不思議ちゃんなのかも知れない。
うっわー、てかもう教室じゃん。 どんな目で見られるのか超気になるー。 アホか、俺。 そんなん全然気にしてねぇし。
「青、教室に入るときぐらいは」
物凄い音がした。 
教室から広瀬楓が窓ガラスを突き破って、
壁にその華奢な体が突撃する。
反射的に青を後ろに隠れさす。
割れた窓の教室から、柊イチルが飛び出してくる。
柊が思い切り蹲る楓を殴り、楓も思い切り柊の足をゲンコツで殴った。
「止めんか、お前らっ!」
担任が大慌てで来るが、二人は目もくれない。
楓の頬や手足に細かな傷が生まれる。 そこから細く細く、赤い血が流れた。
恐ろしく二人とも何も言わずに喧嘩している。
「・・・・・・・青、入ろうか」
「うん」
教室に入ると池田が神妙な顔つきで苦笑していた。
青を席に座らせて、何があったのか訊ねた。
「いや、なんかさ・・・・・・二人とも暴れて謹慎くらってたんだけど、今日学校に来ちゃってさ。 広瀬が廊下歩いてたら柊が邪魔だっつって」
「やけに静かだったけど」
「ずっと教室の中で睨みあってたんだよ。 そしたら柊が広瀬押して、ああなった。 今もだけど」
柊に半殺.しにされている楓を見ながら、
「まあ、二人ともおかしいんだけどさ」
池田がもっともな事を言った。

事件後初めて見た柊の顔。
「・・・・・・・まぁ、なんとも言えないけどさぁ」
簡単なトリックなんだけどねぇ。