ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ぼくらのいるばしょ ( No.9 )
- 日時: 2010/01/15 17:53
- 名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)
作文集を折りたたんで、どうしようもなく苛立ちが募ってくるから急いでそれを削る。
ジョリジョリジョリジョリジョリ・・・・・・・。
「どうしてどうしてどうしてどうしてどうして」
部屋から青の声が聞こえてきた。 ベランダの網戸を閉めて、部屋に足を運ぶ。
青が上半身を起こして両手で頭を抱えていた。
「青」
「どうしてどうしてどうしてどうしてどうして」
「青、大丈夫だから。 大丈夫」
抱きしめる。
抵抗も歓喜もなく、ただ青は呟き続けた。
どうしてどうしてどうして、
青と俺は、生きてるんだろうねぇ。
あの時タヒんじゃってたら、何か変わったのかねぇ。
楓も、トモと一緒に殺.されていたら苦しい思いせずにいたのかも知れないのに。
「・・・・・・裕也」
「ん?」
「嫌い、大嫌い。 みんなみんな大嫌い。 タヒんじゃえ」
「・・・・・・そうだねぇ」
「そうだよね。 嫌いだよね、全部。 全部チャラにしてやりたい。 みんな消えちゃえばいい」
「青、ゆっくり息をしてみて」
「息、いき? 吸って吐いて? それ、いききき?」
青が焦点の合わない目でどこかを見ている。
暗い所。
真っ暗。
しばらくして青が俺を見た。
「みんなみんな、消えました」
めでたしめでたし。
俺と青のお話はこれで終わるんです。
青が笑う。 あんまり上手じゃなかった。
頭を撫でるとそのまま脱力したように目を閉じて倒れる。
元のように寝かしつけて、
さて。
「行きますか」
もういいだろう、柊。
♪
だあいきらい。 普通。
だから僕は壊れる。 自分で自分を、破壊する。
♪
真っ暗な道を歩いていく。 ぬー、暑い。
夏の夜ってなんでこんなに暑苦しいんだ。
あ、やばい。 もう少しゆっくり歩こう。
今何時? あー、夜の10時ねぇ。
そろそろか? んー、眠すぎてやっばい。 青ほどじゃないけど、早寝するタイプだからなぁ、俺。
歩く速度を速くする。
人通りの少ない道を、俺は歩き、そして走り出す。
ぐいっと、肩を掴んだ。
「わっ!」 「しーっ」
慌てて口元に人差し指を持っていく。
俺だと分かって迷惑そうに、
「・・・・・・僕のストーカーなんかして、気持ち悪いです、ユーさん」
「お前も気持ち悪いです、柊さん」
お互いに向かい合って、久しぶりに柊イチルの顔を見た。
少し痩せたか? 大きな目が僕を睨む。
「僕マニアなんですね、よっぽど。 悪い人だ」
「柊ほどじゃないよ」
「意味が分からないんだけど。 何ですか?」
柊が疑い深い目で周囲をキョロキョロ見渡す。
動揺している証拠だ。
「柊はさ、ここで何してるわけ?」
「ユーさんに言う必要、あります?」
「俺が聞いちゃダメ?」
ため息をついて柊が、 「両親を殺.した奴を探してるんです」
予想していた通りの答えが返ってきた。
学校で柊が夜な夜な犯人を捜していると噂がたっていたから。
「ふーん。 そういや犯人はまだ捕まっていないっけ」
「はい。 ホント殺.してやります」
柊の口調が少しだけ変わった。
「なあ、何で広瀬楓と喧嘩したんだ?」
「あの女、トモくんトモくんうるさい。 こっちの教室に入ってきてトモくんどこどこって。 頭にきたから絞めてやったんです」
「宮岡マコトにも会ったんだな」
沈黙。
柊が視線を逸らす。
鼻を鳴らして、 「何ですか、ソレ」
「宮岡マコト、知ってるだろ?」
「知りませんよ、ソレ」
「会った事、あるだろ」
「だから何でですかって」
「その“何で”ってどういう意味だ?」
「はあ?」
柊が苛立ったのか口調を荒げる。 余裕がなくなってきている証拠でーす。
「さっき俺、宮岡マコトに会ったか?って聞いた時、柊が“何でですか”って聞いただろ?」
「だから?」
「マコトを知らないのなら、“誰ですか?”って聞くべきじゃないの?」
「何が言いたいんですか」
白を切るつもりかー、よかろう。
「柊は俺に、“何でそう思うんですか?”って聞いたんだろ? 普通知らない奴に会っただろって言われたら、真っ先に誰だって質問するはず。 だけど柊は誰だとは聞かなかった」
「・・・・・・・・で?」
「宮岡マコトに会ったんだろ? 実際本人に電話で聞いたら、出会った人間の中に女子高生が入ってた。あれって、柊なんだろうなーって」
「その根拠は?」
ようやく食いついて来た。
「何でかよくわからんが、柊が“普通”を嫌っているのは俺も知ってる。 “異常”に憧れているのも」
欠伸をしやがった。 廊下に立ってろーい。
柊は何も言わずに聞いてるみたいだったから続けた。
「そんな時マコトに会った。 異常なアイツに。 そこでなんらかの刺激を受けて両親を殺.した。 異常になりたかったから」
「僕をそういう目で見ていたユーさんを、敬遠します」
「どうぞご勝手に。 で、どうなわけ? 今まで否定はいっこも出てないけど」
バツが悪そうな顔で頬を掻く。 柊が長めのため息をついて、目を細めた。
「ちなみに異常に憧れているから、一人称も“僕”にしたんだろ? 普通は嫌だから」
「まあ・・・・・・・・ひゃくぱーって事はないけど、ある程度は当たってます。 良かったですね」
パチパチと投げやりの拍手をされた。
んだテメー。
「で、どうするんですか?」
柊が俺に背を向ける。
後ろで手を組みながら、
「ここまで謎解きしにきて・・・・・・僕を、やっつけにきたんですか?」