ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: †Dark Resonance† -黒き残響- ( No.15 )
- 日時: 2009/08/19 17:54
- 名前: 冬宮準 (ID: iTW0Fx5P)
Noise 3
Fantastic disaster
歩きなれない、赤や黄色のアンサンブルを生み出す落ち葉が舞う道の上。水と凪は、無言で歩いていた。水は相変わらず下を向いてる。凪は雪に色をつけたような落ち葉を楽しんでいるようだった。そして下を向いてる水の頭をグッ、とつかみ、上に持ち上げた。
「下ばっかり向いてちゃダメだよー?もう少しであの柱に当たるとこだったわ」
確かに水の目の前には硬そうな売れない塾のポスターの張ってある柱がある。水は凪の手を離すと、前を向いて歩き始めた。凪は強くつかまれた手を少々怒ったようにさすると、水の方を少し不思議そうに見た。
「キミ、小さい頃にサーベルを見たことあるんじゃないの?」
また意味の分からない問いかけに、水は眉をひそめた。そして、少しだけ首をかしげる。水は小さく呟いた。
「俺…幼い頃のことは、覚えてないから…」
難しい顔をしている。今まで凪には見せた事の無い表情だ。水は再び下を向き始めた。何故なのか、彼の瞳は悲しみに満ちているように凪には見えた。凪は深呼吸をすると、手を水の背後に構えさせる。そして…
バンッ!
凪の手が、水の背中に直撃する。水はバランスを崩し、落ち葉の海の中に埋もれてしまった。彼の体は痛みにより微かに震えている。そんな彼を凪は見下ろし、怒鳴った。
「あんたねぇ!どーしてそんなに暗いの!!!カッコカワイイ顔してるくせに、もう少し明るく振舞えないわけ……、…っ!?」
急に凪の怒鳴り声が収まった。しかし代わりに、屋上で聞いたあの刃の音が、水の耳に流れ込む。落ち葉に埋もれた顔をあげた。そしてまず彼の目に飛び込んできたのは、何かに刀を構える凪。それを見た水はおかしいと思って立ち上がった。すると先程とは違う形をしているが、見たことのある生物が凪と自分に向かって牙をむいていた。
「サーベル!全くもう、何なのよぉッ!」
凪がサーベルを斬ろうと、刀を横に振った瞬間。
「え…、何!?」
乾いた音がした。気が付けばいつの間にか、凪の手の中にあったはずの刀は無くなり、落ち葉目掛けて飛んでいってしまっていた。コレでは凪はどうする事も出来ない。凪は驚きのあまり足場をなくしたかのようにバランスを崩し、水に倒れ掛かった…と思えば、水の前には一人の男が立っていた。彼は凪を受け止めると、彼女にこう呟いた。
「ここは、水君に任せてみてはどうかな…?」
「…霧様!?今日はアジトにずっといる、と…」
霧と呼ばれた男は、凪に優しく笑って見せた。そして水のほうを向き、期待しているかのような声音と表情で言った。
「水君。このサーベル、君になら倒せるはずだよ」
「…試すんですか、俺を」
「うーん、そういうことかなぁ」
水はいつの間にか霧のほうを睨みつけていた。しかし了解したかのように、ゆっくりとサーベルの方へ歩いていった。勿論、どうすればいいのかなど知るはずが無い。そんな水を凪は心配そうな顔で見ていた。水はサーベルを睨みつける。しかし、何も起こるはずがないと思った、まさにその瞬間。水の足元から紅い魔法円のようなものが広がり、その光は空間全体を包み込んでいった。円がサーベルの足元まで行った。水は無表情で、ただ単に一言、サーベルに向かっていった。
「消えろ」
すると彼を取り囲む円はさらに輝きを増し、サーベルの体を這い登っていった。サーベルが完全に紅き光に包まれると同時に、それは一瞬にしてただの面白みの無い砂へと化していった。かがてその砂も魔法円も消え、何も無かったかのように先程まで水達が歩いていた道に戻った。
「私達が…見たのは…」
凪が立ち上がりながら驚きの声を上げる。霧はそれに優しく答えた。
「そう。間違いない。アレは『神の意志』—…。彼こそが…」
霧はただ呆然と立っている水の方へと視線を移した。
「『意志の紡ぎ手』—…」