ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: そ の 手 は 虚 空 を 掴 み ( No.1 )
- 日時: 2009/10/24 15:55
- 名前: 月乃 葵 ◆BkB1ZYxv.6 (ID: xYJBB/ey)
手を伸ばしても届かない。嘆くことしかできない。無力。誰もが無力。欠伸しながらそんなことをノートに書く一人の少女。
腰の辺りまでの長さの金髪に宝石のような緑色の瞳。黒いワンピースに白いボレロを着ている。彼女は月條翡翠。その肩には小さな妖精の様な少女。髪は青色、目は透き通った赤色。
「リーフィル。なかなか、サクリファイスって見つかりませんわね……。他人のでも奪うだけなのですけど」
どうやら妖精のような少女はリーフィルと言うらしい。翡翠の言葉に頷きながら、翡翠の肩から降りて、飛び回る。
「でも主様。サクリファイスに適正なのを見つけても、私のような妖精型だったらどうするのです?」
「私が欲しいのは人間型のサクリファイスですわ。妖精型は無視ですわね」
苦笑いを浮かべるリーフィル。翡翠がそっとリーフィルに手を伸ばす。不思議そうな顔で翡翠を見つめるリーフィル。
「まぁ貴方みたいに“感情のある”妖精型サクリファイスならいいですわね。私は話し相手がほしいだけですの」
翡翠に言われ嬉しそうに笑うリーフィル。翡翠もつられて笑う。そんな二人の前を一人の少年が通る。
白いTシャツに、紫色のケープ。下はジーパン。右目には眼帯。左目は青。青い髪をポニーテールにしている。この時点で髪の長さは腰くらいの長さである。彼は花椿桜梨。
少年と言っても、体つきは華奢で、顔はどちらかと言えば少女のようだ。初めて桜梨を見た者は少女と勘違いするだろう。
少年は翡翠には見向きもせず通り過ぎる。そんな少年を見てニヤリと笑う翡翠。
「見つけましたわ。人間型のサクリファイス」
リーフィルは黙って少年の歩いていった方を見つめた後、翡翠の顔を見る。黙って首を傾げる翡翠。
「花椿桜梨……正式名、ルゥナ。所有者、紅蓮來兎」
サラサラと言うリーフィル。嬉しそうな顔をする翡翠。
「ふふ……。人のものですのね。必ず奪ってやりますわ」