ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 月 下 の 犠 牲 ( No.12 )
日時: 2009/10/24 16:01
名前: 月乃 葵 ◆BkB1ZYxv.6 (ID: xYJBB/ey)
参照: 儚き幻想の世界に落とされて。散る運命悟りつつ、声を上げて今を生きる。

第三話

 授業が終わる。気づけば流架が正面に立っている。流架の横には紅零、その後ろには悠月。來兎は翡翠の横の席。その後ろに桜梨。
 「えと……さっき言っていた、天使型サクリファイスってなんですの?」
 控えめに聞く翡翠。ため息をつき、ポケットからメモを取り出し何かを書いて翡翠に渡す悠月。首をかしげて紙を見つめるリーフィル。
 「その馬鹿が喧嘩を吹っ掛けた詫びじゃ。書いてある場所に来ればサクリファイスについて話してやる。全員来るが良い。少々協力して欲しいこともあるしな」
 そう言い自分の席に座る悠月。楽しそうに笑う流架。キョトンとしている來兎。桜梨は首をかしげて、翡翠の持っているメモを見つめる。
 不審そうに翡翠を見ているのは先生である。教室のドアを開けて入ってきたのは、腰くらいまでの銀色の髪に、全てを見透かすかのような深い青色の瞳の青年……奏紅桜弥。白衣を着ていて、メモ版のようなものを手に持っている。
 「えーっと。ルゥナ、リーフィル。検査日忘れてましたね? 今すぐ来て下さい」
 静かな声。思い出したような顔をする來兎。チラッと來兎の顔を見てから桜弥の方に歩いていく桜梨。慌てて桜弥にリーフィルを渡す翡翠。

 「検査日を忘れとったん? 馬鹿やなぁ」
 ケラケラと笑いながら言う流架。凄いスピードで流架の頭にぶつかる、ケース付きの分厚い国語辞典。頭を押さえてのた打ち回る、流架。黙ってそれを見つめる紅零。
 「悠月ぃぃ!」
 頭をさすりながら、思いっきり悠月の机を叩く流架。悠月は笑いながら流架を突き飛ばす。どす黒いオーラ。
 「何か証拠があって言っておるのか? 我は何もしておらぬぞ」
 「じゃあ誰が……」
 そう言って翡翠を見る流架。凄い勢いで首を振る翡翠。その横で苦笑いを浮かべながら手を上げる來兎。 その手には流架の頭にぶつかった分厚い国語辞典。恥の方に小さく、紅蓮來兎と書いてある。
 「お前かぁ!」
 大きな声で叫ぶ流架。満面の笑みで頷く來兎。ああ……何故だか笑っているのに怖い。喚く流架。耳を塞ぐ來兎。
 「そこ、席に着けぇー授業を始めるぞー」
 流架が來兎に飛び掛ろうとしたその刹那に、やる気のない先生の声とチャイムの音。流架は先生に睨まれ、仕方なく席につくのだった。