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Re: 月 下 の 犠 牲 ( No.14 )
日時: 2009/10/24 16:03
名前: 月乃 葵 ◆BkB1ZYxv.6 (ID: xYJBB/ey)
参照: 儚き幻想の世界に落とされて。散る運命悟りつつ、声を上げて今を生きる。

第四話

 時間が流れるのは早い。気づけば放課後。翡翠はボーっとしながら悠月に貰ったメモに書いてある場所に向かう。そんな翡翠の後ろを歩く來兎。
 たどり着いたのはとてつもなく大きな建物の前。大きな門。門にはサクリファイス研究所と書かれている。戸惑う翡翠と來兎。白衣を着た流架が出てくる。紅零は無言で流架の後ろに立っている。
 「え……もしかして、流架さんって、サクリファイス研究所の……?」
 二カッと笑って頷く流架。走ってくる白衣を着た悠月。その後ろには、桜夜の姿もある。
 「よく来たのう。今客間に案内する。リーフィルとルゥ……じゃなくて、桜梨の検査も終わったところじゃ」
 そう言うのは悠月。桜弥が優しく微笑んで頭を下げる。不思議そうに桜弥を見つめる來兎。それに気づいたのか首を傾げる桜弥。
 「あの、貴方にはサクリファイスが居ないのですか?」
 「んー。居ませんね。色々知っちゃってる身なので、サクリファイスと契約する気になれないんです」
 そう言って微笑む桜弥。その顔はどこか悲しそうに見えた。來兎は「ふぅん」と呟くだけで後は何も言わなかった。

 客間に案内され、椅子に座るように促される、翡翠と來兎。流架と悠月は二人の正面の椅子に座る。戸惑いながらも椅子に座る二人。
 「んーと。天使型サクリファイスについて、話せばいいんやな?」
 コクリと頷く翡翠。悠月は黙ってメモをめくる。そして一枚を流架に渡す。ビッチリと何かが書かれていて、真っ黒なように見えた。
 「んとな? 天使型サクリファイスっつうのは、簡単に言えば、妖精型サクリファイスと、人間型サクリファイスの血が混ざった奴のことや。まだ一人しかおらんけどな」
 顔を見合わせる翡翠と來兎。少々乱暴にドアが開かれる。肩で息をしながら部屋に入ってくる桜弥。
 「お話中失礼。來兎君。ルゥナの戦闘プログラムを使ったみたいだけど何か合った? 怪我してない!?」
 呼吸を整えてから一気に言う桜弥。流架がヤバイと言うような顔をする。クスリと笑う悠月。翡翠と來兎は苦笑いを浮かべている。
 「お宅の馬鹿が喧嘩を吹っ掛けただけじゃよ」
 悠月がそう言った途端、桜弥は異常に優しい微笑を浮かべ、流架の肩に手を置く。流架は逃げようとするがすでに遅いようだった。どす黒いオーラ。悲鳴をあげる流架。
 「何回、何もしてない人に喧嘩を吹っ掛けるなって言ったらわかるんだぁ! 馬鹿か? お前は本物の馬鹿なのか?」
 そういうのは桜弥。目が殺し屋のようである。もがく流架。それを見て笑う悠月。翡翠と來兎は半分同情のこもった目で流架を見つめる。
 「痛い、痛い痛い! 折れる! 折れるって!」
 流架の声が響く。流石に可哀想と思ったのか、桜弥をとめる悠月。桜弥は「失礼。取り乱してしまいましたね」と言って流架から離れる。
 「で、ルゥナのディバイスを教えて欲しいんだけど……」