ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 月 下 の 犠 牲 ( No.16 )
- 日時: 2009/10/24 16:04
- 名前: 月乃 葵 ◆BkB1ZYxv.6 (ID: xYJBB/ey)
- 参照: 儚き幻想の世界に落とされて。散る運命悟りつつ、声を上げて今を生きる。
第五話
「うんと……ルゥナ……じゃなくて、桜梨のディバイスは三叉槍です」
ディバイスと言うのはサクリファイスが使う武器のことである。ディバイスを使えるのはサクリファイスだけで、そのサクリファイスが持っている能力、力、型によって変わる。
サクリファイスによってはディバイスを持たないものもいるし、楽器など武器に見えないものをディバイスとしているものも居る。サクリファイスの数だけディバイスがあると言っても可笑しくは無いだろう。
「と言うことは、中距離戦が得意か……。あの子と同じだ……あの子と……」
ブツブツと言う桜弥。不思議そうに首を傾げる來兎。流架も何かを思い出したような顔。悠月は無表情。
「えっと……あの。どうしましたか?」
少し困ったように桜弥に聞く來兎。桜弥は「何でもありません」と言う。でも明らかに何かがある。何かを隠しているように見えた。
流架はさっきまでと違って落ち着かない様子。不思議そうな翡翠の顔。悠月だけが無表情のまま、前を見つめている。その様子は何かを思い出しているように見えた。
「失礼しました。今ルゥナとリーフィルをつれてきますね」
深く息を吸ってから、優しく微笑み部屋を出て行く桜弥。黙って桜弥を追う流架。それを見てさっきまで無表情だった悠月が苦笑いを浮かべる。
「どうする? サクリファイスが戻ってきたらすぐ帰るか?」
顔を見合わせる翡翠と來兎。しばらくして翡翠が小さな声で「あの……」と言う。首を傾げる悠月。
「さっき桜弥さんが言っていたあの子って誰のことですの?」
「さぁな。我が知っているわけ無かろう?」
冷たい声。何だか触れられたくないようなことらしい。來兎は黙って首を傾げるだけ。
三人とも黙っている。気まずい雰囲気。悠月は頻繁に腕時計を見る。そして「遅い……。何をやっているのじゃ」なんて呟いたりしているのだった。