ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 月 下 の 犠 牲 ( No.19 )
- 日時: 2009/09/11 20:28
- 名前: 月乃 葵 ◆BkB1ZYxv.6 (ID: NjXpoRP/)
- 参照: 儚き幻想の世界に落とされて。散る運命悟りつつ、声を上げて今を生きる。
第六話
何かが地面に叩きつけられる音。桜弥の胸倉を掴んでいる流架の姿。地面に叩きつけたれたのは、桜弥が持っていたメモ版だった。
桜弥は俯いたまま、流架と目をあわせようともしない。流架は桜弥を鋭く睨みつける。
「桜兄! 何で梨桜がサクリファイスなんかになってんだよ!? なぁ! 答えろよ!」
怒鳴りつける流架。桜弥は体を震わせながら、黙って顔をあげる。その目には涙。不快そうな顔をする流架。
思いっきり桜弥を突き飛ばす流架。あまりにもいきなりだったので桜弥は何も出来ずに、壁に叩きつけられる。
「桜兄、言ったよな? 梨桜は大丈夫だって。俺信じてたんやで? なのに……なんで!?」
怒りと言う感情の全てを桜弥にぶつけるような言い方。桜弥は唇をかみ締め、涙を流す。
「ごめん……。僕があんなもの、作ったから……」
小さな声で呟く桜弥。感情のままに怒鳴りつける流架。どうやら今の流架は相手の表情を見ることさえ忘れるほど怒っているらしかった。謝罪を続ける桜弥。
「お前がいなければ良かった! お前が居なければ紅恋も梨桜も俺達の周りで笑ってたんだ! お前が居なければ!」
その言葉を聞いた途端、桜弥の表情が固まる。涙も止まり、冷たい光の宿った目に……。そんな桜弥をみて流石に言い過ぎたと思ったのだろう。小さな声で「ごめん」と呟く流架。
「……気にしてませんよ。本当のことですから」
少し自虐的に笑う桜弥。流架が手を伸ばすが、それよりも早く桜弥はメモ版を拾い、調査室と言うプレートのかかった部屋に入ってゆく。
壁に寄りかかる流架。消えそうな声で「わかっとる……桜兄は悪気があってあれを作ったわけやない……なのに……」と呟く。
しばらくして桜弥が桜梨とリーフィルをつれて出てくる。流架が声をかけるがそれは完全無視。桜梨は不思議そうな顔。
リーフィルは心配そうに桜弥の周りを飛び回る。薄く微笑んで「ありがとう」と呟く桜弥。リーフィルは気にしないでと言うかのように笑いかける。
「遅くなって申し訳ありません。色々あったもので」
部屋に入りニコッと微笑む桜弥。リーフィルは翡翠の肩に、桜梨は來兎の横に戻る。桜弥はそれを見て、悲しそうな表情を浮かべるのだった。