ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 月 下 の 犠 牲 ( No.26 )
日時: 2009/10/23 17:10
名前: 月乃 葵 ◆BkB1ZYxv.6 (ID: xYJBB/ey)

第十話

 桜弥が握っている赤い宝石の中で赤い光が揺らぐ。桜弥を切りつけようとする茜。小さな声で「守式、光龍ライト・ドラゴン」と呟く桜弥。まぶしい光が走り、茜と桜弥の間に光る龍が現れる。
 驚いて数歩後ろに下がる茜。桜弥はため息をついて「大人しくサクリファイスと契約を結んどけば楽だったかな」と言う。それを聞いた茜は「番犬と契約を結ばれたらこっちが困るにゃ」と言う。
 どうやら茜はサクリファイスのことを番犬と呼び、サクリファイスが居る人間には手出しができないようだった。桜弥は黙って握っていた赤い宝石を宙へと投げる。
 「解!」
 桜弥がそう叫ぶと赤い宝石が光を放ち、銀色の桜弥の髪が、金色に変わる。茜は「わぉ、本気のダイヤマテリアルと戦えるのは光栄だにゃ」と楽しそうに言う。それとは対照的に不愉快そうな顔をしている桜弥。
 「特式、光花ライト・フラワー
 数多もの光を発する花が浮かぶ。馬鹿にするように笑い「そんなのじゃ攻撃にもならないにゃ」と言う茜。桜弥は黙って目を閉じる。凄い速さで増えていく光を発する花……。
 「……殺りなさい」
 桜弥が目を開き静かな声で言うと、花は一気に茜に向かって飛んでいく。どんどんそれを切り裂く茜。それでも桜弥は不敵な笑みを浮かべたまま動かない。……まるで結果が予測できているかのように。

 「十分三十秒……時間が掛かりすぎです。僕の家族なら一瞬で片付けますよ」
 クスクスと笑いながら言う桜弥。茜は顔をしかめ「マテリアルたちと一緒にされては困るにゃ」と言う。
 「マテリアル……意味は素材……か。何のことだか聞いておこうかな」
 桜弥が手を振り上げた瞬間に、桜弥の部屋に流架と紅零が入ってくる。相当急いできたのだろう二人とも息が上がっていた。
 「桜……兄? 何で力を完全開放して……」
 流架が桜弥の姿を見て震えた声で言う。紅零は首をかしげ流架を見つめる。何度も繰り返し「……なんで……」と呟く流架。
 「みゅうー。邪魔が入ったことだし、退散するにゃ」
 茜はそう言って姿を消す。桜弥がため息をついて赤い宝石を自分の額に当て、小さな声で「封」と呟くと赤い宝石が再び光を発し、桜弥の髪の色が元に戻る。
 桜弥は横目で流架を見た後、何も無かったようにノートパソコンを開き、何かを打ち込み始めるのだった。