ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: そ の 手 は 虚 空 を 掴 み ( No.5 )
日時: 2009/10/24 15:59
名前: 月乃 葵 ◆BkB1ZYxv.6 (ID: xYJBB/ey)
参照: 儚き幻想の世界に落とされて。散る運命悟りつつ、声を上げて今を生きる。

第二話

 ニヤリと笑う流架。辺りが黒く染まる。桜梨が顔をしかめ、來兎の方を見る。手で何か合図をする來兎。リーフィルが翡翠の前にでる。その更に前に出る桜梨。
 目を見開く翡翠とリーフィル。桜梨は右目につけていた眼帯を取る。燃えるように赤い瞳……。 
 「感情を持った妖精型サクリファイスは珍しい。マスターの命令。だから守る」
 スッと紅零が前に出てくる。不敵な笑みを浮かべる桜梨。來兎がフッと手を振り上げる。
 「戦闘用プログラム作動」
 桜梨のその言葉が戦闘開始の合図となる。桜梨の背中には純白の翼。紅零の手には青い光。睨みあう二人。
 「水龍ウォーター・ドラゴン!」
 紅零の手の上にあった光はうねりを上げ龍へと姿を変える。黙って右目を手で覆う。首を傾げるリーフィル。
 「氷魔法アイス・マジック
 右目を覆っていた手を広げる桜梨。右目が燃えるように赤色から薄い水色になる。凍ってゆく水の龍。目を見開く紅零。
 そんな事気にせずに再び右目を手で覆う桜梨。そして、黙って手を下げる。薄い水色から無色透明に変化する桜梨の目。一見、右目が無くなってしまった様に見えた。
 「翼刃ウィング・カッター
 桜梨の翼から抜けた羽が刃のように飛び交う。粉々に砕ける氷った水龍。
 目を見開く紅零。また、桜梨が右目を手で覆う。どうやら桜梨の力は右目を覆うことで変わるようだった。今度は無色透明から、美しい緑色に……。
 流架は満足そうな顔で、メモを取っている。來兎は黙って桜梨を見つめ、翡翠は目をキラキラさせて、桜梨が繰り出す技を見つめる。
 「葉龍リーフ・ドラゴン
 凄い勢いで吹っ飛び、気を失う紅零。黒く染まっていた教室が元に戻る。桜梨の勝利である。黙って眼帯をつける桜梨。桜梨の背中から翼が消える。

 「いやぁ。新種の天使型サクリファイス……強いんやなぁ」
 ケラケラと笑いながら言う流架。その背後には肩ぐらいまでの茶髪の髪にどこか怪しげな紫色の瞳の少年……天魔悠月が立っていた。
 「……何をやっておるのじゃ? 他の生徒の迷惑になっておるぞ」
 呆れたような顔でいう悠月。その肩にはピンク色の髪に黒色の瞳をした、妖精型サクリファイスのフーガ。
 「ありゃあ……すまんなぁ」
 鈍い音が響く。少し遅れて声を上げ頭を抱えてのた打ち回る流架。悠月の手には硬そうな棒。そこで紅零が目を覚ます。訳が分からないというような顔。
 「マスター……お怪我ありませんよね?」
 くるりと來兎に向き直って言う桜梨。笑顔で頷く來兎。のた打ち回る流架。教室の中はぐちゃぐちゃである。
 この後、教室に入ってきた先生に怒鳴られたのは言うまでも無いだろう。