ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: >>>  ア   ク   セ   ス >>>> ( No.136 )
日時: 2010/01/16 20:34
名前: RADELLE03 ◆X6s/dtSC5A (ID: QYM4d7FG)

パキン、パキン。

ゆっくりと漂うように歩み寄ってくる詩音に焦心に駆られながらも、ちらちらと教室内に目をやる。

猫に見つかった鼠のような硬直状態の三人は廃校の廊下で、最も会いたくない人物に遭遇してしまった。
  ケンは携帯を持ってないから連絡が取れない——
  かといって私の携帯も今は香奈と繋がっているから他の人には連絡が取れない。
  頼りになるのは、ケンと手中の銃一丁———

 「 ……何故『 カンザキサン 』が此処にいるのですか ?貴方、何しているんですか ?」
わざとらしく間崎という名前だけ強調して、突然間崎に向かったと思えば勢い良く後ろに押し倒した———。
しかし間崎にはすでに詩音の行動が読めていた様で、無表情で詩音の着ている服の襟を掴んでガラスの破片が.散.乱.している床に押し倒す。

 「 ……お前達こそ何してんだよ……。.悪.趣.味.なんだよ ! !」
今度は顔面に.殴.り.かかろうとしたが、詩音は間崎の一発を交わし、立ち上がると同時に自分に服に付いたガラスを一目見て眉間に皺を寄せた。
 「 ——間崎さん……服が切れたじゃないですか」
 「 .気.安.く.呼ぶなよ ! ! もう……関係.無.いんだっ ! お前達と一緒に——」
 「 寝言ですかぁ ?! 今まで貴方は私達と散々〝プレイヤー〟を.殺.し.て.き.たじゃない ?
   ——今更〝自分は違う、自分は正しい〟とか思ったって…〝.無.駄.〟ですよ ?」

舞は正面で問い詰められている間崎からわずかに視線を奥のほうに向ける。
目にうつったのは灯油を持っていた少年が退屈そうに廊下の薄汚れた壁に寄りかかり、足を組んでいる姿。

その少年の姿に自ら囮となった裕樹を重ねてみると身長もふとした仕草もどこか似ていた。

まさかと一瞬思うが、後ろで耳をつんざくような悲鳴が聞こえて現実に戻される。
悲鳴の主は香奈だった。

しかし、この緊迫とした空気で動くことすら出来なかった。
ゆっくりと教室の方へ顔を向けると、教室内に炎が入り始めていた。
その時、衝撃を受けたようにまずいと思った。

  この廃校の床は〝木〟で出来てる——
  それに廃校ってことは、もう材質も古いのかもしれない……

  こんなところでグダグダしてたら校舎全体が.火.事.に.なるかも——

その後の事は決まっていた。

 「 貴方もよく平然としていられますねーっ ! .死.に.た.い.のですか ?
   ……この状況で他人の心配……その冷静さ、彼女に分けてあげたらどうですか」
自分の事を言っているのだと気づくのに少々時間が掛かった。
舞のしきりに教室の中を見ようときょろきょろする動作が今の詩音には油となり、怒りをさらに増してしまったのだ。


 「 ジスも突っ立ってないでさっさと次の作業をして下さい」
今度はジスと呼ばれた、後ろで退屈そうにしていた少年に怒りの矛先は向けられた。


 「 はい、すみませんでした——」
明らかに年ではジスと呼ばれた少年のほうが上だろう。
しかし完全に正式な立場は逆転していたようだ。

だが、ジスの謝るというのが良かったのか、ここで.無.差.別.的.な詩音の怒りは治まった。

 「 ……ッ ! 」

そういう訳ではなかったようだ。

詩音はどこかにナイフを隠し持っていたようで、両手に持った鋭い.刃.の切っ先を一瞬で一本は舞の.顔.面.の前に向けられた。
もう一本は近くの壁に.突.き.刺.さ.っていた。

舞が前に踏み出すなど、今の状況でしたら完全に.自.殺.行.為.だろう。



そして静かに、全員の耳に届くような大きさの声で言った。


 「 ——隙何て作っていたら、この校舎から出ることは出来ないと思います——
   ——その前に、彼女をどう救うのか気になりますけど———」




 「 ——これでは貴方達でゲームを終わらすことなんて出来ないでしょうね……
   ……どちらがこの状況で有利か、舞さん、貴方にはこれ位分かりますよね ?」



その一言で、舞の中の何かが限界を超えた。