ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

ア ク セ ス ( No.143 )
日時: 2010/01/25 15:56
名前: RADELLE03 ◆X6s/dtSC5A (ID: QYM4d7FG)

 「うぇ……どうなってんだよ、げほっ」
咳き込む涼に続いて、間崎と香奈を立ち上がり変わり果てた周りを見渡す。

白い煙は未だに辺りに漂っており、黒い色へと変化した壁はパラパラと剥がれている。
.生.き.た気のしない舞は急に思い出したように立ち上がり、啓介に尋ねた。
 「 ……ダルシーとかって……今——」
 「 大丈夫、裕樹も合流したみたいだよ。さっき、電話がかかって来て、舞たちにも教えてあげてだってー……。あれ……」

  よかった……
  裕樹、捕まっちゃったかと思った———

安心しているのもつかの間、間崎を見て啓介が眉間に皺を寄せた。
 「 ……え、何で関係者がいるのー ? 不味くないー ?」
言葉と全く不.釣.合いな軽い淡々とした口調で涼に聞く。
突然聞かれた涼も「 え ?」と言ったまま黙り込んでしまった。
  
  どうしよう……
  啓介に変な誤解を持たせないようにしないといけない——

 「 あ.っ.あの……間崎はもう私達の仲間になったから——」
 「 でも、スパイとかだったら……どうするの ?」


一瞬で間崎は凍りついたように硬直したまま、青ざめていった。
そんな間崎に近寄り、ぐるぐると周りを歩く啓介は考えているようだった。

  ここで間崎を仲間にしなかったら間崎の居場所がなくなっちゃう……

助けを求めるように、チラッと香奈に視線を向けるが相手は気づいていない様で、ぼーっと壁の一点を見つめている。
まるで自分だけ見ている世界が違うようだ。

 「 ほっ……本当なんですよ ! 確かに仲間は抜けました……。
   僕はもうあいつ等と縁はきったんです ! !」
 「 言葉では何度でも言えるけどねー……」
間崎は必死に弁解しようと頭を抱えている中、啓介は首を振っていた。

 「 啓介、本当だよ。
   ……確かに聞けば怪しいけど、こいつ…間崎は関係者に向かって『 お前らの仲間じゃない』って言ってたよ——」
その時、涼がおずおずと間崎を庇うような言葉を発した。

 「 涼……」
自分を庇ってくれたからか、自分の名前を言ってくれた事か、間崎は今にも泣きそうな顔をした。
 「 じゃあ、大丈夫だよなー間崎ぃー」
 「 えっ……あ、はい ! 」

  よかった……でも、ダルシーとかにもこれを言わないといけないのか——

その時、舞の服の袖が引っ張られたかと思えば
いつの間にか自分の世界から抜け出した香奈が耳打ちをしてきた。
 「 早くここ、出た方がいいって……一階燃えてたらシャレにならないよ」
 「 そうだね……じゃあ早いところ此処から出よう……」

パ.ン.パ.ンッと手でスカートに付いたほこりを払い、携帯電話をポケットにしまった。


 「 皆、関係者が来るかもしれないから……今の内に此処を出よう !」
香奈の一声に、五人が一斉に廊下へ出て行き、なるべく音を立てないように階段の一段一段を慎重に降りていく。


その時、急に自分の体が宙に浮いたような不思議な感覚になり、途端に階段を下りた所の床へと叩きつけられる。
背中を蹴飛ばされたようだ。

 「 い……痛ぁー……」
立ち上がって後ろを振り向くと、全員が後ろを向いて固まっている。
  
この異様な光景のなか、静かに、そっと、暗い階段を少し上って廊下側に目をやると……。

 「 あ……」


詩音が銀色に光っているナイフの切っ先を、こちらに向けていた。

しかし、詩音たった一人ではなかった。