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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ライトストーリー ( No.2 )
- 日時: 2009/09/03 12:38
- 名前: ピエロ ◆Cn5TjroUCc (ID: DNQP6awF)
黒い魂なんて初めて見た。普通の人は魂自体を見ることはないのだけれどね。僕は見える。
幽霊は存在するんだ。
幽霊、と言ってもホラー映画みたいな悪霊は滅多にいない。しかも肉体は見えないんだ。手で包み込めるくらいの大きさの小さい霧があるだけ。普通は青くて、たまに黄色。そして、僕の飼い猫のミケが赤い魂をしている。赤、青、黄、まるで信号だ。
ミケも最初は——死んだばかりの頃は魂が青かった。でも、一週間ほど前からだろうか。僕が学校から帰るなり小屋に見に行くとミケの魂は赤くなっていた。ミケに、どうしたんだ、と訊いてみても、何も応えない。いきなり、なにも話さなくなってしまった。
そのまま何事もなく過ごしていると、例の黒い魂だ。その時ちょうど庭の墓に行くところだった。いきなり黒い魂が現れ、途端にミケは消えてしまった。僕が言葉を失っている間に去ろうとする黒い魂。
「待って」
僕は声をかける。黒い魂は少し振り向いたが(そのように感じた)、自分のことではないと思ったか、そのまま進む。
「だから待てって!」
走って黒い魂の前に先回りし黒い魂に向き直った。
——俺に言っているのか
魂はやっと声をかけてきた。耳で聞こえるのではなく感じる。
「そうだ。おまえはなんだ。ミケをどこへやった」
きつい口調で言う。視線を感じて振り向くと通りかかった五十代ほどのおばさんがこっちを見ていた。一人で喋っている僕に対して哀れな目を向けている。
「す、すいません。……演劇の練習をしてたんです」
咄嗟に思いついた嘘を言う。悪くないかな。
おばさんは僕の話を聞いて「そう、頑張ってね」とにっこりしながら言い、歩いていった。
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