ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 涙冠水幻 ( No.6 )
日時: 2009/09/08 22:52
名前: 涙。*  ◆1Et5qn7pjU (ID: ly29w5Uv)

* Plorogue


ピッ…ピッ…ピッ…ピッ…

集中治療室から聞こえてくる音。

その音は、彼の心臓の音を刻んでいく。

彼の周りには、六人ほどの医師や看護婦がいた。

集中治療室の外には彼の兄弟と…

たった一人の妹がいた。

皆、ガラス張りに張り付くように手を当てていた。

「叶夜…兄さん…」

彼…叶夜には、ガラス張りの向こう側から、

そう聞こえたような気がした。

黒と藍色のオッドアイには、涙が浮かんでいた。

だが、そんな事は叶夜には分からない。

麻酔によって目を閉じている以上、

外の様子は見られない。

ただ…感じられるのは…

自分の命が時間と共に削られていくということ。

そして、妹が自分の心の中で自分の名前を叫んでいること。

だんだん苦しくなっていく…

だんだん意識が遠くなっていく…

「もう…私は…この世から消える…」

叶夜がそう心で呟いた瞬間…。







———ピー…






「兄さァァァァァァァんッ!!!!!!」









          ———叶夜はこの世から去った。