ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 声—Il mio augurio— 第一部01更新>< ( No.27 )
- 日時: 2009/09/12 08:46
- 名前: 黒月*綺空 ◆UvyP8R2qR2 (ID: 39gb1XuH)
- 参照: 餅ネーム黒月*綺空とに㍻ヤンデレ@黒月! 修学旅行まであとまさかの13日w 最近のブームは桃組+戦記とヘタリアです
*02*
Io, una persona come te lo prova antipatia piu piu
——しかし、千波が何度、声をかけ、揺さぶっても休み時間中に漆夜が起きることはなかった。
「千波ー」
去年、千波と同じクラスだった永森 杏(ナガモリ アンズ)が恐る恐る声をかける。千波は頭に疑問符を浮かべて、「なにー?」と返す。
「なにーじゃないよ!! アンタ、なんで柏崎なんかに話しかけてるの?」
「なんで……って、友達になりたいからだけど……」
「友達ぃ!? 柏崎とぉ?」
「う……うん」
杏の反応に千波は少し戸惑いながら頷く。すると杏は、はぁーと深くため息をついて頭を押さえた。
「千波って噂とか興味ないもんねー」
「へっ?」
「いーい? これは全部、柏崎に関する事実の話よ」
杏は千波の耳元で「他の人に話しちゃ駄目だからねー?」と囁いてから話し始めた。
その話によると、【柏崎 漆夜】という人物はなんとも最悪な人物となった。
初等科三年の時にどこからか転校して来たらしく、その時から、常に一人で居て他の人物と関わろうとしない人物だったらしい。
千波はそれくらいならそんなに騒ぐほどじゃないよね? と問うと杏はそれだけじゃないんだからーとさらに話始めた。
「——で、全くニコリとも笑わないし、怒ったりもしないの!! まったく表情も変わらないし、人形みたいよね!?」
「……そ、そうかな?」
「でも、アイツ、顔は意外に可愛いから、あーいうのが好きな女子にはモテるのよー」
杏は納得いかないような口調で言うと「アタシはあーいうのタイプじゃないけどねぇー」と付け足した。
「でねでねっ、ここからはアタシが独自で入手した話なんだけど……。アイツ、三大美女の小暮さんに告白されたらしいよー」
「え!? 小暮さんって……」
「あの小暮さんよ」
「それで……結果は?」
「振ったらしいわよ。その時に『僕に関わるな』って言ったらしいのー。だから、千波も気をつけてよね」
「う、うん……」
杏はチャイムが鳴るまでずっと漆夜の噂や悪口を言っていた。そして何度も念を押すように「気をつけてよね」と言ってた。
(私は柏崎くんがそんな人だなんて思えないけどなー)
そして二時間目も終わり、次は三時間目。どうやら次からはさっそく授業でしかも美術らしく、みんな教室移動をしていた。
「千波ぃー。移動しよー」
「う、うん……。ちょっと待ってて」
杏が声をかけるも、千波はそう答えた。杏は少し不満そうにするも「わかった」と答え、別の子のほうへいってしまった。
(——みんな結局うわべだけなんだから)
千波が辺りを見渡すと、まだすやすやと眠っていた漆夜の姿があった。
「あの……柏崎くん?」
「……」
「あの、柏崎くーん。起きてますか?」
「……」
「あのーっ、起きてますかーっ」
「……起きてるから、だから叫ばないで?」
千波が叫ぶと漆夜はうるさそうに耳を押さえながらそう答えた。千波はホッとすると「次、美術室に移動だよ」と教えた。
「それで?」
「え、どういう意味?」
「噂、聞いたんだろ……。なのになんで僕に近づくんだ?」
本当に不思議そうに聞く漆夜。千波にはなんでそこまで不思議そうにする理由がわからなかった。
「なんでって——友達になりたいからに決まってるじゃん!!」
「——なら、僕はアンタみたいな奴、大嫌いだ」
「え……」
「目障りだ。僕に関わらないで?」
漆夜はそう冷たく言い放つと教科書類を持たずに教室を飛び出してしまった。千波はポロポロと涙を零しながらその場に座り込んでいた。