ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 鏡に映れ月の影 ( No.2 )
- 日時: 2009/09/17 17:29
- 名前: 龍凛 (ID: OYJCn7rx)
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第一話 『血陰とちかげ』
「_____では、改めて災害発生からの行政の対応
を振り返ります。2XXX年、9月12日午前3時4
5分。雛菊市花岬村を中心とした大規模な地震が発生死亡者は今現在10298人に及ぶ。行方不明2897人。生存者は1034人。ただいま自衛隊も出動し救出作業が本格的に行われている模様。また新しい情
報が入り次第、詳しくお伝えします。」
あの、悲しいニュースは今も新鮮に覚えている。
私はあの地震で家族全員を失ってしまった。私だけ生
き延びたのだ。こんなに辛い思いをするのなら、あの
時一緒に死ねばよかったのに______
夢見は最悪だった。あの悲劇がまたおきると言う最悪
な夢。朝からじっとりと汗をかいてしまった。
髪の毛が額に張り付いていて、右手ではらう。
カーテンの隙間から漏れるのは、真っ直ぐな朝日。
たしか、あの日もそうだった。私の中ではあの地震は
今も続いている。妹の叫び声、お母さんの弱弱しい声とお父さんの助けを呼ぶ声は、まだ耳に響いてる。そ
のときの私はただ、「助けられない」の思いで突っ立
っていた。
「ちかげちゃん、ちかげちゃん!おきてるの?」
「あ、おばあちゃん。起きてるよ」
身寄りの無い私は、村を出ておばあちゃんの家に住ん
でいる。2人で仲良く暮らしています。
学校にも行かせてくれてるし不便なことは一切ない。
今、テレビでは2年前のあの地震のことを報道してい
る。黙々と上がる灰色の雲、ガレキ、ひどい音の出る
ラジオ。
「ちかげちゃん・・・」
おばあちゃんが心配そうに私の顔をのぞきこむ。
あの悲劇から立ち直っていないのではないかと不安な
のだろう。
「大丈夫。もう終わったことだもの。くよくよしてら
れないわ」
私は無理やり笑顔を作り、おばあちゃんに向ける。
本当は、心が壊れそうなくらい悲しい。
「そう・・・よかった。ちかげちゃんが強い子で」
「へへへ・・・そっかな」
「今日、帰ってからお墓参りいこうか?」
「そうだね!じゃあ帰り道にお花かって帰るよ」
中学校。友達のいない私にはなんともいえない感覚が
ある。親友の宮脇真由ちゃんは、今日、誕生日だ。
(命日が誕生日だなんて・・・・)
悲しい、悲しい戦いは、まだまだ続く____
学校が終わって、その帰り道のこと。
道端に一冊の本が置いてあった。
誰かの忘れ物かな、と思いつつ何処かに名前が書いて
いないか確かめる。それを見て驚いた。
「・・・岩崎・・・ちかげ・・・!!!」
自分の名前だったのだ。
こんな偶然・・・・ありえない。
その本のタイトルは、『カケラを紡ぎ鏡を作れ』
なんともいえない題名だった。こんな本、もってはい
ない。不審に思いつつ中をパラリとめくってみる。
でも、そこには何もかかれていない、真っ白な本だっ
た。しかし、本のはじっこに何かが書かれている。
「神の力を集いし月よ、我を導け光のもとへ・・・」
それを唱えた瞬間だった。
目の前にいつのまにか女の子が現れたのだ。
その女の子は、ちかげにそっくりだった。
ただ、目は赤く、髪は黒い。
「誰・・・・?」
そう、女の子に問いかけると、小さくて細い声が、
唇からもれた。
『血陰。』
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