ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: worid +狂い出した世界の歯車+ ( No.3 )
- 日時: 2009/09/20 10:06
- 名前: 玖赦 (ID: z.r.R/BL)
第一話 普通=退屈
肌寒くなった。
近所の半袖少年が七部袖になった。
緑の葉が鮮やかに染まる。
秋がやって来た。
最も“退屈”な季節。
「一番退屈で嫌いな季節だ」
高校生と思われる少年がそう呟く。
肩近くまで伸びた黒髪が風に揺れる。
長く伸びた前髪が左の瞳を隠している。
制服を軽く着崩し、学校へ向かうところなのだろうか。
秋に染まりつつある町並みを少年はボーっと眺めている。
「暑くも寒くもない。これと言って大きな連休もない。退屈な季節がまた来た……」
少年は一つため息を漏らし道を進む。
少年の制服に付いている名前プレートには、鬼崎 歪(キザキ ヒズミ)と書かれている。
歪……歪むという漢字が使われている。
この少年の親はなぜこんな名前をつけたのだろう。
歪は学校の前で足を止めた。
「でけぇ……」
彼は上を眺め一言呟く。
どうやら転校生のようだ。
学校を見て普通、毎日通っている者なら驚いたりしないだろう。
「ここが聖グレイセス学院……か。さすが私立の金持ち学校だ。そこらの学校と比べモンになんねぇな」
軽く引き気味で歪はそう言う。
ここはどうやら仏教というよりはキリスト教を重んじているのだろう。
学校というより教会に近い外見だ。
広場のような場所には聖母マリアの像がある。
「どけっ!! 危ねぇぞ!!」
後ろから大きな声が聞こえてくる。
その声はどんどんと彼へ近づいてくる。
「なんだぁ!? 朝っぱらから」
歪は後ろを振り返る。
振り返るのが遅かった。
歪の目の前には身長の高い茶髪の少年が迫っていた。
同じ制服を着た少年が。
「はぁ!?」
歪は少年を避けようと後ろへ飛び移った、がやはり遅かった。
茶髪の少年は歪の上へ覆いかぶさりその重みに耐えられず歪は地面に倒れた。
「うわぁぁ!!」
二人の声が空に響き渡った。
*
「ひどい目にあった……」
傷だらけになった歪は校舎に入ってまず保健室へ向かった。
広い。
広すぎる。
保健室へ向かうまでに軽く一時間かかってしまった。
「くそー……。あの茶髪……次あったら絞め殺すぞ」
そう呟きながら一時間遅れで新しい教室へ入った。
2−Aと書かれた教室のドアを開ける。
すると今は休み時間中なのか生徒達は自分の席を立ち、騒いでいた。
無言のまま教師に言われた席に向かおうとすると、歪の目の前に数人少女が立ち塞がった。
「!?」
歪は驚き目を丸くしている。
「貴方、鬼崎 歪さんでしょう?」
いかにもお嬢様という感じの口調。
見た目も良い所のお嬢様のオーラ全開だった。
「そう……だけど……」
歪は慣れない状況に戸惑っていた。
自分の周りに大勢の人間がいる。
このことは歪にとって滅多にないことだった。