ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: worid +狂い出した世界の歯車+ ( No.5 )
日時: 2009/09/20 19:10
名前: 玖赦 (ID: EUu3Ud2H)

第三話 集まりし七人の者達

「まぁ、挨拶はこれくらいにして本題だ」
愁は頭をボリボリと掻きながらそう告げる。
「本題?」
「そうだ。お前から何かを感じる……」
意味のわからない事を言われ歪は再び混乱する。
「な、何かって何だよ?」
そう問うが返ってきた答えはこうだった。
「今日の放課後この学校の西校舎三階の一番端、音楽室へ来い。詳しい話はそこで話す」
愁はそう一言だけ残し、教室へ戻った。
ただでさえ慣れない状況で混乱しているのに急にそんなおかしなことを言われては頭の回転が追いつかない。
「初日からいったい何だってんだよ」
そう呟き歪も教室へ戻ろうとした。
その瞬間、何ともいえない気配を感じ、歪は後ろへ体を向けた。
しかしそこには何も異変がない。
どこにでもある生徒や教師達の普通の光景が広がっていた。
何なんだよ……そう心の中で呟いた。
クラスに戻ってからも気配を消えることがない。
まるで自分を見張っているようなその気配に歪は違和感を感じていた。

   *

授業も終わり学校一日目は何とか終了を告げた。
いや、何事もなかった訳ではないが一応無事に一日を過ごせたことに歪は安心していた。
(確か西校舎の音楽室だっけ……)
歪は愁に言われた場所へ向かっていた。
自分のクラスのある東校舎からどれくらい歩いただろうか。
やっとの事へ西校舎の音楽室へたどり着くことが出来た。
「ここか……」
今まで行わされてきた訓練のせいか、これぐらいの距離では呼吸が乱れることはなかった。
扉に手をかけると、鍵は閉まっていないらしく簡単に扉は開いた。

中には愁をはじめとした五人の生徒が集まっていた。
教室で歪に話しかけてきた少女達もそこにはいた。
「よぉ。思ったより早くたどり着けたな、迷わなかったか?」
グランドピアノの椅子に腰掛けている愁が左手を上げ、歪に問いかける。
いまいち状況を理解しきれていない歪は愁の問いかけに答えることはなかった。
「歪さん、こちらへ」
朝話しかけてきた少女達が歪を呼ぶ。
歪は言われたとおり少女達へ近寄った。
すると胸の辺りまで伸びた綺麗な黒髪の少女が話し出す。
「はじめまして。私、一条 朱羅(イチジョウ シュラ)と申します。こちらにいるのが同じクラスの柊 碧(ヒイラギ アオ)」
そう言って隣に立っているスカイブルーの瞳の少女を紹介する。
碧と呼ばれるその少女は澄んだ海色の髪を一つに結い、何でも見透かしているような目で歪を見つめた。
あまり人に慣れないのか、朱羅の服の裾を掴み、後ろに隠れている。
「よろしく……」
歪は朱羅と握手を交わし、そして碧にも手を伸ばした。
すると碧はおどおどしながらも歪の手を掴んだ。
そして「よろしく」と一言漏らし、また朱羅の後ろへ隠れた。

「めっずらしー。碧が自分から人と接するなんて。俺だって懐いてもらうのに一年かかったぞ?」
歪は声の聞こえた方へ視線を向けた。
そこには窓の淵に腰掛ける赤髪の少年がいた。
「はじめましてー。俺は棗 真広(ナツメ マヒロ)だ。三年B組」
真広は窓の淵からひょいっと降り、歪の顔を見つめた。
「な、何?」
歪は一歩後ずさりする。
「あ、悪ぃ悪ぃ……いや、“アイツ”の宿主がこんなおチビさんだとはなーと思って」
「真広」
歪が怒りの声を上げる前に、朱羅が言葉を塞いだ。
(宿主?)
歪は頭の中でその言葉を復唱していた。
聞いたことのない言葉だった。
それに“アイツ”という言葉にも引っかかる。
何よりも……
ここに集まっている人達からは他の人間とは違うものを感じていた。
「あと一人、三年の夏村 鎖(ナツムラ クサリ)と伊坂 婁威(イザカ ルイ)が来るはずだったんだけど……ちょっと来てないようだな。そいつらの紹介はまた今度。それより……」

「本題に入ろうか……鬼崎 歪?」

真広の低い声が音楽室内で重く響いた。