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Re: 黒の惨状   5話目up ( No.19 )
日時: 2009/10/24 17:43
名前: たきばね ◆rvP2OfR3pc (ID: AzSkpKat)

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 物凄く痛い、と思ったら、その瞬間はあっという間に過ぎていった。

 「いってええ!」

 秋久は顔を抑え、蠢く。眠っていた頭が、一気に覚めていった。

 「ちょ…おじさん!どういう起こし方ですが!」
 「声をかけても起きないこいつが悪い」

 老人は古びたゴツいブーツを履き、長く厚いコートを着ていた。鳥が住めそうなごあごあした髪と合わせると、何かの冒険物語にでてくる長老のようだ。
 短気な老人は、数回声をかけても起きない秋久に、容赦なく顔面を靴で踏んだ。

 「大丈夫?宮城くん」

 まだ眠たそうな顔の皐月は、秋久を心配しながら荷物をまとめていた。空はまだ薄暗く、太陽は東の山に数センチほど顔を見せた程度だった。

 「…どうしたんだよ」

 部屋にあるありったけの薬とタオル。少しの食料を小さなカバンにつめる皐月。外の様子をしきりに気にする老人。緊迫感が漂っていた。

 「ここをでる」

 老人が短く言う。

 「は?今からか?」
 「ああ。急がなければ」


 「多分、死ぬぞ」