ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒の惨状 二話目up ( No.8 )
- 日時: 2009/09/30 21:34
- 名前: たきばね ◆rvP2OfR3pc (ID: AzSkpKat)
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精神的にも落ち着いてきたところで、この奇妙な状況に理性がついてきた。
「政府派」と「警察派」が一緒に居る。「警察派」である秋久は「警察派」の人間を殺した。
殺した?
「……」
秋久は頭を抱え、俯いた。
己との、約束を破った。この手で人を殺めた。あれは確かに、自分の意志だった。震える自分の手を見ながら、秋久は酷く泣きたい気分になった。
「…どうかしました?」
片手にマグカップを持った少女が、心配そうに顔を覗いた。
「俺は…殺したんですね」
目に熱いものが上がってくるのが分かった。少女は何も答えない。いや、答えられないというのが正しい。
「人は殺さないと…決めたのに…」
「同じ事です」
力強い少女の声に、秋久は思わず顔を上げた。少女の方が驚いたような顔をして、しどろもどろになりつつも、徐々に音量をあげ話し始めた。
「え…と、あの時、「警察派」の男を殺さなかったら、私達が殺されていました。皮肉ですが、結果は同じ事です。運が悪かっただけです。気に病まないで下さい」
最後に「救われない答えですいません」と付け足した。少し後悔しているような口調だった。
「…冷静だな。俺は全然だめだ。どっちにしろ誰かが死んだって事実に悲しんでるしかない。…頭悪いから」
少女は微笑し、マグカップを秋久に渡した。簡単なミルクのようなものだった。
「私の親が外科医と薬剤師だったので、生死に対しては冷静なんです。あ、そのミルクには鎮痛剤も入ってますよ」
なるほど、と秋久は納得した。医者の子ならば、あの手際のよさも頷ける。薬に詳しいのも同じだ。
秋久はミルクをゆっくりと口へ運んだ。温かく、包まれるような感覚が横切った。ふいに母のことを思い出し、顔が少し赤くなった。
「本当に、助けてくれて、有難うございます」
少女は改めて礼を言う。