ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 〜アドバンス〜コメントお願いします ( No.5 )
日時: 2009/09/25 21:22
名前: 遊太 (ID: EWcIN/Ij)

♯2    襲いかかる悪魔

青年は樹海を抜け、一般車道に出た。

後ろからは女の子が息を切らしてついてきた。

「待って・・・・」

「別についてこなくていいよ。」


「はぁ!?」


女の子は青年に向かって蹴りを入れる。

青年は驚き後ろに飛び退いた。

「な、なんだよ!!」

「あんたのせいで自殺できなかったんだよ。それに、あんたのこといろいろ知りたいし・・・・・」

女の子は顔を赤らめながら言う。

「私は七瀬晴香。中学2年生。」

「俺は・・・・」

青年はふとあることに気がついた。



名前がない______



物心がついたときから施設で生活し、‘実験体89番’とずっと呼ばれてきた。

自分の名前はなんだ・・・・?

青年が悩んでいると、晴香が青年の顔を覗き込んだ。

「どうしたの?名前は?」

「えっと・・・・・」



実験体89番・・・・89・・・・・ハック・・・・



「俺は、ハックって名前だ。」

ハックがそう言うと晴香はふ〜んという顔をする。

「ハックは何歳?」

「えっと・・・・17歳!!」※8+9で

「じゃあ私より年上だね。」

ハックと晴香は顔を合わせて笑った。その時だった。


「いたぞ!!実験体89番だ!!」


男の声に2人は後ろを振り向く。

100メートル先に黒い車が3台こちらに向かってくる。

「そんな・・・・」

ここまで追いかけてくるなんて、奴らは一体・・・


「逃げよう!!ハック!!」

晴香はハックの手を握り、車道の向こう側にある小屋へと走る。

「逃げるな!!止まれ!!」

男の声は近づいてくる。

2人は小屋に逃げ込むと、窓から外を伺う。

黒い車3台は車道のど真ん中に止まる。

中から自衛隊のような格好をした人間が降りてくる。

その中に、見たことのある人物がいた。


「あ!!」


ハックは思わず声を上げて唖然とした。

ロシアの船で俺を殺そうとした奴だ。名前は・・・テレンス!!

ハックの言うとおり、テレンスは自衛隊の隊長と真剣な顔つきで話している。

黒いスーツに赤いシャツ、背中にはギターを背負っている。

「89番は生け捕りにしろ!!絶対に殺すな!!」

テレンスは大声で叫ぶと小屋の方をギョロリと見た。

その時、一瞬だがハックはテレンスと目があったような気がした。


「89番!!大人しく出てこい!!ぶっ殺してやる!!!!!」


「さっき生け捕りにしろって・・・・」

晴香が少し笑いながらつぶやく。

しかし、状況はかなり深刻だ。この小屋の出入り口はさっき入ってきた所だけ。

窓は四方にあるが脱出には使えない。

「ここは俺が・・・・」

ハックは覚悟をきめて両手に力を入れる。


「楽勝♪楽勝♪」


晴香はニヤニヤと笑いながらハックを見る。

ハックは意味が分からない。

「私にはちょっとした能力があるんだ。」

晴香はそう言うと、左手をハックの右肩においた。

「場所は東京世田谷区。」

晴香がそう言うと、2人はその場から一瞬で消えた。


************


「突入!!」

テレンスの掛け声とともに自衛隊は小屋の中へとなだれ込む。


「・・・・・・・」


数分経つが銃声音どころか音一つ聞こえない。

テレンスは不審に思い声をかける。

「89番は!!」

「いません!!小屋の中にはだれもいません!!」

「何!?」

テレンスはその言葉にとうとうブチギレた。


「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」


テレンスは車にパンチを喰らわす。

車はものすごい音を発しながらほかの2台を弾き飛ばして数メートル先まで吹っ飛んだ。

テレンスは歯をガチガチと鳴らしながらつぶやいた。



「アルフォンス・アーチノート・・・・・・」