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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 火を吹く黒猫 〜黒い月のそばで〜 ( No.1 )
- 日時: 2009/09/26 15:42
- 名前: 瑠姫 ◆PZGoP0V9Oo (ID: 34QCmT3k)
空から神様の涙が落ちてきた。
それは私の頭のてっぺんから爪先までを、まるで滑り落ちるようにして濡らす。
この、溢れ出続けて止まることを知らない欲情と興奮を抑えようとしているかのようだった。
でも無駄だ。
体内に熱い熱い湯が注がれたかのような私の体の火照りは、静まる気配さえない。
朦朧としてくる気配のなかで、あの人の声だけが、もう一度はっきりと蘇ってくる。
—蘭も随分変わったんだね。私、蘭となら不可能なんかないって思ってたの。力あるくせに、そうやってもったいぶってるところが気にくわないのよ。—
・・・そして、あの悪夢。短いようで、長かったあの時。自分が、自分じゃなくなっていた時間・・・。
思わず身震いして、腕にはめている黒い時計を見ると、午後九時を指していた。前から何人かの学生の集団が来たので、私の右腕のジャンパーに飛び散っている血が見られないよう、腕を組む格好をした。
ようやく体の火照りが静まってくる。すると、急に雨の中の冷たさと孤独さを感じ、家に帰りたいという衝動に駆られた。今夜はきっと眠れぬ夜だ。
——ああ、月が白いや・・・——
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