ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 火を吹く黒猫 〜黒い月のそばで〜 ( No.2 )
- 日時: 2009/09/26 15:57
- 名前: 瑠姫 ◆PZGoP0V9Oo (ID: 34QCmT3k)
新学期だっていうのに、朝から雨だ、ってみんながぼやいていたあの日、私はこの町に来た。親の転勤が決まった時、絶望感を覚えると同時に、次の中学校でも吹奏楽部に入ろうと決めていた。
今までの中学校ではフルートのファーストパートを担当していたが、やけに調子にのる一年と、三年生のパートリーダーとの対立があり、充分に楽しめなかった思い出があった。今回はサックスでも希望してみるか。いや、トロンボーン、べたにトランペットもいいかもしれない。なんて考えることが、私の唯一の慰めとなった。
実際に一週間期間をもらい、吹奏楽部の活動を見学してみると、なかなか面白いメンツが揃っていた。人も良いし、演奏のレベルも高い。中でも、フルート担当の北条未来という同学年の少女がよく私に寄ってきて、様々な話をした。
私が前いた中学校の吹奏楽部について、私が何のパートを希望するかについて、フルートのファーストを担当していたなら、またフルートを担当してみたら、など、長く話を(主に未来がだが、)楽しんだ。
「うちらのブラバンって、全学年、とにかく陽気な人が多いの。パート練とか、合奏中とかに厳しいことはあっても、それが終われば、ハイ、仲良しよ。すごく楽しいよ!」
目を輝かせてそう語る未来に、私は思わず、
「いいね、明るくて。私のいたところ、すごくピリピリしてたから。泣く人なんてショッチュー出たし、部活に来なくなる子も結構いて・・・」とこぼしてしまった。慌てて、あ、何かゴメンと謝ったが、未来はそんな事気にする様子もなく、
「でも、またここでブラバンしたいと思ったんでしょ?それって、演奏する事にマジで幸せ感じてたからなんじゃん?」
と、サラリと、まるで言い慣れた台詞を吐くかの様に私に言うのだった。直後は、なんか大口たたいてんなぁと白けてしまったが、後々未来ってすごいと感じてきた。多分、こいつ国語得意だな、とも感じた。とてつもない力を持った奴だ、そして未来と出会えたことが
——運命だという感覚が確かにあった。