ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 綾乃と微笑む悪魔 ( No.2 )
日時: 2009/09/27 19:43
名前: 勇人 ◆NC1AxUg.ec (ID: DrxGkANi)
参照: 元、紅だけど何か?

プロローグ「死んでしまった彼」

ちょうど、私が中学2年生の頃……。

ちょうど夕方ごろ。
蜂蜜が、空を包んでいるような黄色の空を見ていた。
「綺麗だね」
「そうだな……」
彼は、チョコレートみたいに甘い声で、答えてくれた。
彼の甘い声は、私をいい気分にさせてくれた。
雨が降っているときに、元気づけてくれた。
風邪をひいたときも、安心させてくれた。
そんな彼が……好きだった。
この時が、永遠に続くといいのに……。
ずっと動いている時間の中で、私はそう願った。
「アヤノ、帰ろっか」
彼だけは、私のことを「アヤノ」ってよんでくれる。
よばれるたびに、両頬が熱くなる。
彼は、私の全てだった。
なのに……。
なのに彼は……。

私と彼は、手を繋いで帰っていた。
両頬が熱い。
初めて、手を繋いでくれた。
嬉しかった。
だけど、この喜びは一瞬で消え去った……。

ププウウウウウゥゥゥッ!
「……っ!」
信じられなかった。

「悠人おおおおおぉぉぉぉっ!」

彼は、信号無視したトラックにひかれてしまった。
死んだってことは、触ってすぐわかった。
彼の冷たい手……、冷たい顔……、冷たい体……。
驚くほど冷たかった。
彼の甘い声は、もう聞けないの……?
彼はもう笑ってくれないの……?
私はただ泣いた。
泣くことしか、できなかった……。

あれから2年……。
私は、普通にすごしている……。