ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re:       紅—血染め、崩壊の生活。— ( No.13 )
日時: 2009/10/21 20:04
名前: 琉絵 ◆l8pbXGbvPw (ID: kVKlosoT)

*


   ルール?
   俺等にだって意見はある。
  


   だが抗えない運命。
   だから俺は殺していく。
   俺は戦闘が好きだから——……
   それだけだったのに、何故出会ってしまった?



*


「……あーあ、血ドロドロだぜ。コイツどうせメタボとか何かで死ぬ運命だったんだろうな」



夜に浮かぶ月。——今日は三日月だった。
しかしその三日月は怪しげに輝いていた。
それに気づく者は少ない……いや、居ないだろう。


何処にでもある普通の公園。
木で森のような状態になっている場所に、1人の太った丸坊主の男が血まみれになって倒れていた。


黒い高級そうなスーツは自らの血で汚れていた。
見開いた目からは血が流れ、涙の様に見える。



そしてその死体を見下ろす少年。
黄緑色の短髪に、瞳は緑色。
白いパーカーは男の返り血で汚れていた。


「……あーあ。最悪」


そう言って少年は死体を蹴り上げた。
だがその時だった。
騒ぎでも聞きつけたのか分からないが——……
1人の少女が少年を見ていた。


「ゲッ」


少年は驚き、そして「まずい」と言った様な表情になっていた。
この光景を見られたら、俺は刑務所だ。


しかし少女は男の死体に驚くことも無く、只少年を見つめていた。
切れ長の黒い瞳で。


「…………んだよっ。警察に知らせろよ」


刑務所から出たら、即俺は殺されるだろうな。
ボスに……


しかし少女は言った。


「言わないわよ。それより此処から離れたら? さっきの悲鳴聞いたのか、警察に知らせた通行人が居たわよ」
「ゲッ」
「ほら、このジャンバー着なさい!」


そう言って少女は、自分が着ていたジャンバーをリンに投げ捨てた。
返り血で汚れたパーカーは、瞬く間にジャンバーで隠された。
ズボンはそれほど付いていなかったので大丈夫のようだが。



「……パトカーのサイレンだわ」
「うわー、最悪だ。こうなったら……」
「第一発見者にでもなる気? そんなの危険だから行きましょう」


2人は男の死体から離れ、公園を去った。

Re:       紅—血染め、崩壊の生活。— ( No.14 )
日時: 2009/10/21 20:38
名前: 琉絵 ◆l8pbXGbvPw (ID: kVKlosoT)

*


       我儘かもしれない。
       でも幸せを掴み取りたい。
       もし誰かと死ねって言われたら。
       君と死にたい。



*


「あなたの名前は、何なの?」


灰色のショートヘアに、切れ長の黒い瞳。
スカーフを首に巻き、薄いパーカーを着てその中に薄い長袖を着ている。
——そんな外見の少女は、そう質問した。


“噴水公園”と呼ばれた、ごく普通で単純なその名前の公園のベンチに、2人は座っている。


「俺? 通称と本名どっちがいい?」
「通称……? もしかして殺し屋?」
「そーゆう事だ」


意外にも彼女は怖がらなかった。
何故と問いたかったが、無理だった。


「風向燐。通称“精神が狂った者”」
「こんな風に喋ってるのに、精神が狂ってる? 違うわよ」
「戦闘好きって事で、これが通称」


燐は白い歯を見せて笑う。
完全には笑っていなかったが。
少女は深呼吸をし、こう言った。


「私は、楫谷栞」
「栞?」
「……普通でしょ?」
「つか、楫谷ってどー書く?」
「木へんに口と耳書いて“楫”」


——普通なのか分からねぇな。
つか、何で殺し屋とこんな風に平気で話が出来るんだ?
意味分からねぇ……


燐はこの栞という少女が不思議に思えてきた。
栞は言った。


「ねぇ」
「? んだよ」
「また、会える?」
「……おー、会える。ゲッ、仕事放置しすぎた……あー、あのクソ棒人間に怒られるわ」
「棒人間? 体系が棒なの?」
「ちげーよ。そいつの武器が棒なの。怒ると振り回す危険人物だぜ」



ペラペラとロィラの事を喋りだす燐。
ロィラに対しては、日頃から不満が合ったらしい。
ロィラも悪い。だが原因を作るのは燐だ。


「ねぇ、その殺し屋のルールはあるの?」
「ん? ルールね……」


燐は立ち上がり、栞の方へ振り向いていった。
彼の顔は月明かりで照らされ、綺麗に輝いていた。









        「自分の意見を通す事が出来ない。抗えない運命にある」