ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 紅—血染め、崩壊の生活。— ( No.15 )
- 日時: 2009/10/22 19:21
- 名前: 琉絵 ◆l8pbXGbvPw (ID: kVKlosoT)
*
私は殺せない。
罪人でも殺せない。
私は殺せない。
人だけは、壊せない。
*
「お前は、殺さないのか? 何年もここに居て——」
「…………」
紅葉の隠れ家とも言える場所。
その場所、見た目はごく普通の一軒家の中の部屋。
少し薄暗い部屋に、2人の人物が存在していた。
1人は髪をあげ、額を出した男は、大きな椅子に座っている。
まるで党首だ。
濃い目の灰色の髪を後ろに固めている。
そして男はサングラスを掛け、煙草を吸っている。
年齢は見た目では分からない。
だが、30〜40代はいっていると思われる。
そしてもう1人は女。
右側で花の様な髪飾りで、薄い灰色の髪を結っている。
マリンブルーの瞳は、男を鋭く見つめている。
その少女は無表情だった。
「……どうした?」
「…………私は殺害などしたくない。だから、殺害なんかしない」
「お前は、自分の意見は絶対に曲げないな……」
男は少女の言葉に呆れるように言い捨てる。
すると少女は窓の方向へと振り向く。
男は少女の行動に気がつく。
「どうした」
「…………紅葉の中で、誰かが殺したくないと嘆いています」
「……それはダメだ。我儘に過ぎない」
少女はドアのある方向まで歩くと、男に吐き捨てる。
「……強要はしない方がいいと思います」
*
「……嬬浬。お帰り」
「あ、海。仕事無かったの?」
2階建てのアパート。
その1つの部屋に、彼等は存在していた。
「今は殺りたくないから」
「自分の意見を尊重した方がいいわよ」
ベッドに腰掛けた青年。
パーカーのフードを被り、瞳の色は藍色だった。
口調と共に、表情はあまり変わってはいなかった。
そんな青年の両手に、スープを持たせた嬬浬。
青年はそのスープと嬬浬を交互に見た。
「……あったかいね」
「そう? パーカーのフードは被らないで」
嬬浬は青年が被っていたフードを下ろした。
其処には灰色の少し長い髪があった。
青年はスープを飲む。
そして嬬浬の手を握った。
「……最近、不安でしょうがない。もう、紅葉から抜ける事は無理だし、運命だし抗えない。でも不安で嫌だ。自分だけ死んで、嬬浬が悲しむのはもっと嫌だ」
青年は子供のように呟いていた。
嬬浬は愛しい彼の名前を呼んだ。
「海。その時は、一緒に死のう」
「……うん。僕もそう願ってる」
嬬浬の肩に海の頭が乗る。
海の髪を撫でながら、嬬浬は耳打ちした。
「ハッピーエンドが、私達に存在すればいいね」