ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 紅—異世界と現実人間の生活。— ( No.8 )
- 日時: 2009/10/12 20:06
- 名前: 琉絵 ◆l8pbXGbvPw (ID: kVKlosoT)
序話Ⅳ
*
「……条累」
「…ほぇ?」
とある中学校の放課後。
時計は4時30分を指していた。
その中の教室の端。
窓際の席で黒い髪、黒い瞳を持つ少年が、栗色の髪、栗色の瞳を持つ少女を起こしていた。
その少年の瞳は、静かに少女を見ていた。
少女は顔を上げ、目を擦りながら口を開いた。
「……おはよー、軋間〜」
まだ眠たいのか、目には涙が浮かんでいた。
『軋間』と呼ばれた少年は、2つの鞄を持っている。
その内の少し潰れた鞄を、少女の机の上に置く。
「……帰ろう」
「うん、帰ろう。てかあたし、いつから寝てた?」
「……3時ぐらい」
「うわ、ホントに? ごめん、バイトは?」
軋間は小さく呟く様に言った。
「……今日と明日休み……」
「へー」
「……条累」
「?」
条累は軋間を見上げて、不思議そうにする。
軋間は条累を抱きしめていた。
「…………?! 軋間?」
「……お前をストーカーしてる奴が居たから、隠した」
彼等が抱き合っている場所は、廊下だった。
しかし廊下の隅に、1つの影が伸びている。
隠れているつもりだろうが、夕焼けのせいで影は伸びている。
それに気づいていないのだろう。
「えー……あ、3日前に来たラブレターがそうかも?」
「……」
「——軋間、送り主ぶっ飛ばして来ていいかな?」
条累の顔つきが変わった。
——本気で気絶させようとしていた。
だが軋間は強く抱きしめる。
「……条……いや、吉良」
「離してよ。今からぶっ飛ばして来る!」
「駄目。絶対に駄目」
条累は溜息を付き、そして軋間に言った。
「分かったよ……でも襲われる」
すると軋間は条累を抱き上げ、そして廊下の隅へと向かう。
そして1つの影は蹴られる。
「いたいな……軋間君?」
「……消えろ」
「何を言っているんだい? 条累さんは僕の物なんだよ?」
1つの喧嘩が始まっている。
しかし終止符は吉良の行動によって切られた。
「……吉良は、俺の大事な奴。だから消えてくれ」
「五月蝿いな……」
「ねぇ、城島君。あたしね、コイツが好きだから」
そう言って、吉良は軋間の腕から飛び降りる。
そして軋間の胸倉を掴んで、自分の方へ引き寄せた。
軋間と吉良の唇がぶつかる。
軋間は逃れようとするが、吉良は柔道・空手・武道を得意とする女子だ。
逃れられず、彼女のなすがままとなった。
深く、長い接吻だった。
唇が離れる。
軋間の顔は真っ赤になり、そのまま片手で顔を覆って立ち座りをした。
城島は呆然としていた。
「あたしの大好きな奴だから。だから諦めてくれないかな?」
城島は立ち去った。
あの光景を見れば。ましてや自分の好きな人があんな事をすれば立ち去るだろう。
「……条累」
「あはは、帰ろっ」
彼女は頬を赤らめながらも、笑っていた。