ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 紅—異世界と現実人間の生活。— ( No.9 )
- 日時: 2009/10/12 20:24
- 名前: 琉絵 ◆l8pbXGbvPw (ID: kVKlosoT)
序話Ⅴ
*
車も通っていない。
車のかわりに『馬車』が使われている。
人が歩いている。
緑の髪、赤い髪、青色の髪——
自分達の世界では無い。
此処は自分達の世界では無い。
「刹浬」
「なっ、何なのよ……此処」
白雪の様に真っ白な長い髪を持つ少女の右手を、明るめの茶髪の少年の左手が握っている。
「俺にも分かんねぇ……つか、さっき馬車通ったじゃん?」
「通ったわよ! いくら“東京”でも馬車は使わないでしょ?! 馬車を使うなんて、おとぎ話よっ」
少女は興奮しながら早口で喋る。
少年はその少女に対して言った。
「だろーな。——つか、これからどうする?」
「知らないわよっ!! どうするの……錐磨」
『錐磨』と呼ばれた少年は困っていた。
彼女——刹浬の方が、錐磨にはとても大切だった。
その時だった。少年と少女の前に手があった。
2つの手。
1つの手は人差し指、薬指に太い緑色の指輪が嵌められた。
1つの手は全部の指に、金色や黒色、銀色と髑髏、蜘蛛などのデザインが書き込まれた指輪が嵌めてある。
「……兄貴、何で手差し伸べてるんだよ」
「そういうお前こそ。お前等、大丈夫か? ここ盗人が居るからさ、あんた等も売られるよ」
「う……売られる?!」
「うわ、うるせー、この高い声。だから女って嫌いなんだよ」
「五月蝿いわよっ! このチビ!」
刹浬は自分よりも身長が小さい男に対して、そういい捨てる。
チビといわれた少年——実際小さいが、言った。
「チビ?! うるせーよ、このクソ女!」
「アンタの方が五月蝿いでしょ、この馬鹿猫!」
「猫だと、オラァ!?」
兄貴と呼ばれた少年は、溜息を付く。
そして錐磨の正面にしゃがみこむ。
「お前の名前は?」
「火倉錐磨。あっちの女は、逢陀刹浬」
「変わった名前だな」
「…お前等は?」
少年は楽しそうな笑みを浮かべると、言った。
「俺は、ウィザーク・ホルテスミス。あっちは、俺の弟で、テリカ・ホルテスミス」
ウィザークはそう言った。