ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 人・類・滅・亡・リモコン ( No.117 )
- 日時: 2010/01/17 17:21
- 名前: 唄子 ◆pHAblsSAME (ID: PQvy21Xz)
第三十四話 隠されていた者
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「じゃあね、ジュディ!」
「また明日ね、杏江!」
家の前からジュディを見送った。ジュディとは冬休みになっても遊んでいる。こんなにあたし達は仲がいいけど、それでも死.んでしまった玲菜に会いたかった。
「はあ……」
あたしは溜め息をついた。玲菜とはもう会えないから。……突然、後ろから声が聞こえた。
「ちょっと、アンタ、何やってるのよ。世界を救う奴がこんなのでいいワケ?」
だ……誰?
「まさか、DARK GODの……」
「バ..カじゃないの?なんですぐに人を疑うワケ?」
「じゃあ、貴方は……」
「アンタの姉貴よ。鈍.いのね、杏江って」
姉貴……?
「あの、あたしにはお姉ちゃんはいないけど……」
「あら、知らなかったの?あたしとアンタは双子よ」
双子……?
「杏江、ご飯よ……って、え? 柚江……?」
「母ちゃん、久しぶりね。約十三年ぶり」
約十三年ぶり……?
「柚江、何の用……?」
「杏江に話があるの。早く家に入れなさい! ……ほら、杏江も早く入りなさい!」
「うん……」
あたしはお姉ちゃんに連れられて家に入った。お母さんはお姉ちゃんをリビングまで連れて行った。
「柚江、ちょっとここで待っててくれる? 杏江にちょっと用があるから」
「何かたくらんでるんでしょ。いい、あたしは杏江に用があるの! 母ちゃんはさっさとこの部屋から出て行きなさい」
「うん……」
お母さんはリビングから追い出された。
「ほら、二階に行きなさい。この話は聞かれたくないんだから」
「はいはい」
結構気の荒いお姉ちゃんだ。あたしとは全然違う。お姉ちゃんがリビングに戻って来て、ソファに座った。……あたしを見つめている。
「……正直に言って。母ちゃんは全くあたしの事をアンタに言ってなかった?」
「うん」
「そう。なら、いい。あたしとアンタが生まれた後に、山形のじいちゃんとばあちゃんがあたしを引き取ったの。ばあちゃんの家にはあたしはいなかったでしょ?」
「うん。何で?」
「実は、いたのよ!開けてはいけない押入れがあったじゃない。そこにあたしはいたの。その時は大事なお客さんが来るからって、押入れから出る事は許されなかった……」
「じゃあ、何でお姉ちゃんとあたしは今まで会えなかったの?」
「本当の理由はね、山形のばあちゃん達は息子の結..婚相手であるあたし達の母ちゃんに不満があったのよ。だからばあちゃん達はあたしを母ちゃんから奪って……。母ちゃんが山形のばあちゃんの家に行った所、見た事ある?」
うそ……ばあちゃん達、酷い。
「ない……」
「ばあちゃんはね、あたしを奪い取って母ちゃんに『貴方には孫を育ててほしくありません。うちの子と遊び暮らしていたからです。いいですか、柚江は私が育てます。柚江を必ず成績優秀にさせます。貴方が杏江を育てなさい。杏江を柚江より成績優秀にさせたら柚江は返してあげます。まあ、杏江は劣.等生に育つでしょうけど』って言ったの。母ちゃんは腹が立った。だから母ちゃんは二度とばあちゃんの家に行かなかったの。で、あたしは杏江の存在を教えられることもなく育っていった……」
酷い……ばあちゃん、あたしが劣.等生だなんて。本当の事だけど。
「うん、確かにあたしは劣.等生よ」
あたしはそう言って泣いてしまった。
「あたしも最近、杏江の存在を知った……。あたしがばあちゃんの家のリビングから出るとばあちゃん達は杏江の話をしていた……。杏江の手紙を読んでいた。『私の孫が世界を救うなんてね。そんな誇らしいことはない』って言っていた。でも、ちょっと悔しそうだった。自分が育てた孫ではなかったから。だから、ばあちゃんは母ちゃんの事を認めて、あたしは母ちゃんの所に返された。……そう、アンタの勇気が母ちゃんを救ったのよ」
あたしの勇気が——?
「杏江……会いたかったよ」
「柚江お姉ちゃん……」
こうして、あたし達はお姉ちゃんと暮らすことになった。
「あたしの妹が世界を救う人で良かった……」
お姉ちゃんはベッドで寝る前にそう呟いた。
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