ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 人・類・滅・亡・リモコン ( No.118 )
- 日時: 2010/01/17 17:23
- 名前: 唄子 ◆pHAblsSAME (ID: PQvy21Xz)
第三十五話 柚江、初登校
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「へーっ、アメリカの学校ってこんなのなんだ」
お姉ちゃんはそう言って驚いていた。
「お姉ちゃん、とりあえず、入ろう」
「うん……」
「杏江!」
向こうでジュディが呼んでいる。
「杏江、誰? その子……」
「双子のお姉ちゃん。橋本 柚江よ」
「柚江さん、初めまして! 私はジュディ。友達になってくれない?」
「うん……。友達なんて、初めて」
……お姉ちゃん、英語は得意なんだ。お姉ちゃんは人の前ではちょっと大人しい。家の中では口が悪いけど。
「ジュディでもいいから、校内を案内してくれない?」
「いいよ、柚江! こっちにおいで!」
ジュディはお姉ちゃんの手を引っ張った。
「ジュディ、待ってよ!」
お姉ちゃんの笑顔を初めて見た。……友達がいないって、どんなに孤独で辛い事だったんだろう。でも、普段から孤独だったらいずれ人と別れる悲しみを味わわずに済む。でも、仲がいい友達が普段からいて、その友達と別れる時——その時のショックは大きいものだ。
「柚江って友達がいなかったって本当?」
「うん……親がいないってからかわれていた。今まで杏江や母ちゃん達とは暮らしてなくって、ばあちゃんの家にいたから、からかわれて」
「十三年間も……?」
「そう」
……お姉ちゃん、そうやってからかわれていたんだ。辛いとも言えずに心の中にしまってあったんだ。その気持ちはどんなに孤独だろう——双子の妹であるあたしでもお姉ちゃんの気持ちの全ては知らない。お姉ちゃんとあたしは他人だもんね。
「そんな事、忘れよ!いつまでも下向いていたらダメ! 世界を救う勇者のお姉ちゃんが下向いてたら情けないよ」
「うん……忘れる」
確かにお姉ちゃんは忘れたいのかもしれない。でも、その傷は大きいんだよ、とてつもなく——。だから、その傷は簡単には癒えないはずだ。
「ほら、早くおいでよ!ここが教室よ!いい所でしょ?」
「うん」
「わあ、ジュディ! その子、転校生?」
「うん。杏江の双子のお姉ちゃんだって! 名前は橋本 柚江よ」
「柚江、よろしく!ところで、杏江って姉妹がいたんだ、知らなかった」
「うん、意外でしょ」
お姉ちゃんは照れていた。
「皆さん、席に着きなさい。ホームルームを始めるわよ」
ちょうど先生が来た。
「皆さんは知っているかもしれないけど、杏江ちゃんの双子のお姉ちゃんの柚江ちゃんが転校してきたの。仲良くしてあげてね」
「はーい!」
お姉ちゃんはとても嬉しそうだった。その調子で今までの嫌な思い出を忘れてね。全てを忘れることはできないけれど。
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