ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 人・類・滅・亡・リモコン ( No.124 )
- 日時: 2009/12/26 11:10
- 名前: 唄子 ◆pHAblsSAME (ID: PQvy21Xz)
第三十七話 喧嘩
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……しかし、簡単に人を犠牲にするのって、俺としては、気持ち悪い。世界を救う人間が他の人間を犠牲にしていいのか?
次の日、元々手下だった奴らがレイチェルの周りを囲んでいた。
「一文無しのレイチェルお嬢様、どうするつもり?」
「香里のせいよ! 香里があんな事をしたから私がこんな目に……ほら、さっさと香里をやっつけなさい!」
「嫌」
「どういうつもり?」
「一文無しだろ、お前。あと、俺らは香里の事を救世主だと思っている」
「なっ……」
香里が教室に入ると、奴らは香里の周りに集まった。
「救世主が来たぞ!」
「香里、万歳!」
すると、香里は奴らを押して、
「どきなさい」
と言った。
「はい、救世主様!」
……よく考えたら、香里は救世主などではない。人の会社を潰..してメリットあるのか?俺は香里を呼んだ。
「香里! お前……」
「何? 奈央土」
「何でPINK HEARTを潰..したんだよ」
辺りは静まり返った。昨日の俺は甘かった。愚.かだった。
「あら、奈央土を助けてあげたのよ」
「どういうつもりだよ。俺は助けろなどと言っていない」
「奈央土はね、ウチより運動能力が鈍.いのよ」
「勝手に決め付けるな、貴.様!」
「だからね……DARK GODにやられる前に何とかしなきゃって思ったの。本当は奈央土に感謝してほしかったの」
「何だと……」
俺は拳を上げていた。
「あら、喧嘩の前の状態ね。でもね、こっちはこれがあるの」
香里は竹刀を取り出した。
「お前……どこからそれを?」
「この学校はね、日本の文化も大切にしてくれているの。DARK GODの法律で日本の文化を大切にしなさいって言われているからね。リーダーが日本人だからだけど。……さて、喧嘩でウチに勝ったら奈央土を強いと認めるわ」
そう言って、香里は竹刀を振りかぶった。——だが、俺は竹刀を素手で受け止めた。
「……!」
「危ないな。これを本当の喧嘩だと思ってんのか? 本当の喧嘩はな、武器は己の拳と足しかねえんだよ。」
「なっ……」
「香里も弱.い奴だな、正直がっかりした。お前に世界を救う権利などない。悔しいのなら、実力で俺に勝て。そして当日にDARK GOD本部に来い」
「チッ……面白くない男」
香里は教室を出た。……そして、奥で小さくうずくまっているレイチェルに俺が言った。
「お前もやった事が香里と同じだということは知っているよな。同じ事繰り返すなよ。……俺はもう帰る。香里のことは、すまなかった」
「治人……いや、奈央土!」
「悪いがノア、今日から一人で帰れ」
分かっている、俺がレイチェルにしてやれることは少ししかないということを。
「そんじゃ、あばよ、元気でな。お前らの未来は俺が守る」
学校を出て、俺がいた教室を窓から見た。……誰かいる。
「レイチェルさん……」
あいつは……まさか。
「これ、受け取って下さい。DARK GODに負けないで」
札の束を渡している人物がいた…夢歌だ。レイチェルは黙.って受け取る。
「これはDARK GODがこっそり貴方のお父様の会社から奪.い取っていたお金です。そのごくわずかですが。残りは、奈央土さんが私達の未来を守り抜いた後に貴方の所に戻ってくるはずです。どうか、この事件に関しては、奈央土さんや香里さんをそう恨.まないで」
正気を取り戻した夢歌は、微かに俺を支えていた。また、香里の泣き声が少し聞こえた。今までの自分を見つめなおしているようだった。
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