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Re: 人・類・滅・亡・リモコン ( No.134 )
日時: 2009/12/26 11:22
名前: 唄子 ◆pHAblsSAME (ID: PQvy21Xz)

第四十一話 杏江、指名手配
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「杏江!」
向こうで誰かが呼んでいる。そして、手を振っている。
「杏江、ウチだよ!」
あれは……玲菜だ!
「玲菜! 生きてたんだ、良かった! .死.んだなんて、嘘だよね! 玲菜!」
玲菜はにっこりと微笑んだ。
「死.んでないってば。何言ってるの、杏江」
やっぱり玲菜は生きていた。ニュースでやってた事なんて、嘘だよね——しかし、突然、あたしと玲菜の間に、黒く、大きな壁が……。白い景色は、突然黒く染まった。
「さっきから何言ってるのよ。『玲菜』って……」
「お、お姉ちゃん?」
……何だ、夢だったんだ。そうだよね、玲菜は生きているはずがないもの。
「ところで、杏江、外の貼り紙が……」
お姉ちゃんは写真をあたしに見せた。
「近くの電柱に偶然貼ってあったんだけど」
「何これ……」
写真に写っている貼り紙には、赤い字で『MOMOE HASHIMOTO』と書いてあった。右下に、小さい字で『DARK GOD』と書いている。
「……これ、どう見ても杏江を狙っているのよ。杏江がやられたら、この世は終わりじゃん!」
「とうとう指名手配ポスターが貼られたのか……」
あたしも奈央土さんみたいにDARK GODに狙われてしまった。
「……ほら、杏江、これを着なさい」
お姉ちゃんの服が差し出されている。
「お姉ちゃん、何やってるの?」
「あたしが杏江で、杏江があたしになるのよ。ほら、髪も二本に縛って……」
お姉ちゃんが、あたしに?
「……出来た。いい、杏江、次からは柚江って名乗りなさい」
「でも、お姉ちゃんが.死.ぬのはヤダ!」
「杏江が.死.ぬよりはいいじゃない。じゃあ、あたし、行くから」
お姉ちゃんは外に出た。
「お姉ちゃん! ヤダよ!」
「……ここではあたしを杏江って呼びなさい。あんたはあたしなんだからね」
そして、お姉ちゃんが行った所は、警察署……。
「お……ねえ……ちゃん」
「もう、帰りなさい」
帰れないよ。
「帰れ! 何度言ったら分かるの?」
「うん……帰る」
でも、本当は警察署の外で見ていた。
「あの、あたしが橋本 杏江です」
お姉ちゃんはそう言って、警察署の奥に.消.えた。そして、ニュースで「橋本 杏江容疑者、自首」と報道された。
「柚江、なんで杏江を見てあげられなかったの?」
お母さんはあたしにそう言った。
「だって……杏江が勝手に何処かに行ってしまって」
「杏江のせいにするつもり? いい加減にして! 杏江は.死.んでしまうかもしれないのに……」
確かにそうだ。でも……。
「うるさい! 何で自分の子供を信用できないわけ? 親として最.低!」
「じゃあ、おばあちゃんの所へ帰りなさい! お前はうちの子じゃないわ!」
……思ったより、お母さんは冷たい人だった。
「おばあちゃんに電話しておくから、早く支度をしなさい!」
「だって……杏江の意志でこうなったんじゃないの」
「私の言う事を聞きなさい!」
酷い。何でお母さんは酷いの? お姉ちゃんがお母さんの家の子になってからお姉ちゃんへの扱いが酷い。あたしはお姉ちゃんとは性格が違うので、かなり傷付いた。……そして、ジュディ達に別れの挨拶をしないまま、オハイオ州に引っ越したおばあちゃんの家に行った。……いつまであたしは一人ぼっちなんだろう。いつも仲が良かった友達と別れてしまうなんて。
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