ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 人・類・滅・亡・リモコン ( No.91 )
- 日時: 2010/01/03 17:50
- 名前: 唄子 ◆pHAblsSAME (ID: PQvy21Xz)
第二十一話 奈央土、出国
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日本を去る時が来た。
「いい、奈央土。必ず仮名を言いなさい……」
「そんなもん分かってる」
パスポートも仮名だ。
「……はい、結構です。刃.物等は持っていませんね」
今の俺は北濃 奈央土ではない。今の俺は、竹藤 治人(たけふじ はると)という架空の人物になっている。勝手に親がその仮名を考えたのだが。
「じゃあ、奈央土……いや、治人。飛行機に乗るわよ」
「絶対に奈央土と名乗るなよ」
両親と飛行機に乗るのは初めてだ。俺の家は福岡空港に近いのだが。……俺は奈央土ではないフリをして飛行機に乗り込んだ。カナダまではかなり時間がかかるらしい。乗り換えしなければカナダには着かないからだ。
「おい、カナダ人の知り合いって誰だよ」
「サラっていう友達よ」
「学校とかはどうするんだ?」
「カナダの学校に行くのよ。サラの子供のノアとね。あんたの同級生よ。十三歳から十七歳の子がそこの学校に行くみたいよ」
学校に行く事は出来るらしいが、俺は英語にはあまり自信が無い。まだ英検は三級までしか取っていないからだ。
「ほら、さっさと英語の勉強しなさい! 向こうで恥かきたくなかったら!」
「しょうがないな」
しかし、飛行機で勉強している間に、眠くなってしまった。
俺達は乗り換えをして、やっとカナダに着いた。空港では、サラと呼ばれる女が家族を連れて待っていた。
「菜緒子! 久しぶりね!」
「会いたかったよ、サラ! ほら、治人、サラ達に挨拶しなさい!」
「こんにちは」
「あれ? この子、奈央土じゃなかったっけ? 治人なの?」
「指名手配されてるって言ったじゃん。だから此処では奈央土の事は治人って呼んでほしいの」
「そっかー。ごめんね、治人君!」
「あっ……気にしないで下さい」
こうして、俺達のカナダ滞在は始まった。
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