ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

4非日常 ( No.4 )
日時: 2009/10/17 18:51
名前: 仲矢真由乃 (ID: C4wHHg61)

「ここだな」
「ここだね」

スバルとカズキは、依頼屋特有のポップな字体で描かれた看板を見上げた。ただ、薄暗い路地裏でそれを見ると不気味なことこの上ないのだが。
看板には「依頼屋 依頼受け付けます」と簡素に書かれていたが、よく見ると「ルーツと愉快な仲間達☆」という言葉の痕跡が確認できた。誰かが上から書き加えたのだろう。
スバルがドアを開けてまず耳に飛び込んできたのは、少年の声だった。

「あーっ!? ルーツ兄それおれの苺だし!!」
「元々は皆の苺!」
「でも配った後じゃん! ルーツ兄のあるじゃん!」
「良いじゃん減るもんじゃないし」
「思いっきり減ってるー!?」

あまりに場違いな会話に、スバルは扉を半開きにしたまま硬直してしまった。頭の回線がショートしたらしい。
一歩下がっていたため会話が聞こえなかったカズキは、スバルの突然の行動停止に首をかしげる。

「スバルー?」
「……」

返事はない。どうしたものかと思考してカズキが下した決断は、

「せいっ」
「痛ッ!?」

思いっきりスバルの向こうずねを蹴ることだった。いわゆるショック療法である。

「おまっ……いきなり人の急所を蹴るんじゃねえ!?」
「スバルが別の世界に旅立っちゃったのかと」
「そんなわけあるか!?」

渾身の叫びだった。