ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

6非日常 ( No.6 )
日時: 2009/10/20 22:32
名前: 仲矢真由乃 (ID: dCDhnHOn)

「ん? レリィじゃなかったのか」
「うん、お客さんだって」

店内には、ソファーに座っている二人の男子がいた。
一人は今、少年に向かって問いを発した三人と年恰好の変わらない黒髪の少年。まだ凍える風の吹くような季節ではないというのに、ロングコートを着込んでいる。

「ルーツ兄、いちご……」

もう一人が、案内した少年を恨みがましく見つめている子供。まだ十歳前後だろうか。目が大きく、全体的に活発そうなイメージを与える。つば付きの赤い帽子を室内だが被っている。台詞から見るに、先程苺を取られたのがこの少年であり、取った犯人が二人を招きいれた、おそらく名前はルーツであろう少年だと思われる。
黒髪の少年が立ち上がって、二人に挨拶をした。

「いらっしゃい、依頼屋へようこそ。副店長のクオークです。今日の用件は?」
「レリィという人がいると聞いて来たんですが」
「レリィを? すみません、今レリィは出払っていまして。もう帰ってくると思うのですが」
「そういうことを言うと何故かすぐ帰ってくる法則発動!」

ルーツ(暫定)が楽しそうに茶々を入れ、それをクオークが睨みつけたところで、再びドアが開いて、見知らぬ少女が入ってきた。

「うわマジで発動した!? 俺すげえ!」
「……お客さん?」

一人でテンションの上がるルーツを気にも留めず、少女はクオークに問いかける。クオークが頷くのを確認した後、少女は二人へと向き直った。

「いらっしゃいませ。会計係のレリィです」

鈴を転がすような声質とは裏腹に、平坦な口調で少女は名を名乗った。