ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 時間旅行-Timetravel- ( No.2 )
- 日時: 2009/10/13 18:49
- 名前: 耀騎士 ◆q6clyPzEas (ID: m7pepIKd)
昔、新学期ありけり
桜が咲き、まだ肌寒い朝。
大知は勢いよく家を飛び出した。
新学期だっていうのに、早々と遅刻をしそうだ。
パンを片手に、常盤中学へダッシュ。
「おはよう!」
大知は2年3組のドアを開け、
皆も
「おはよう」
と返した。
大知はそんなのも気にもせず、
「裕介!爽良!華!」
と声を上げて探し出した。
新学期。クラス替えもして、新しい雰囲気が漂う中、
「ここにいるよ!」
「これも運命か…」
「うるわいさね!朝っぱらからー…」
「わーい!みんないたんだね!」
どうやら、大知のお探しの相手は全員いるようだ。
「2年にもなって、こうして4人そろうと、調子あがるよな!」
「それもそうね!」
裕介は、教室の隅でうずくまっていた。
「おーい、裕介、なーにしてるんだ?さっきこれも運命か!っていった奴、お前だぜ?なに新学期だってのに、そんなテンションひくいんだよ!」
大知は裕介の肩をたたいた。
裕介は、うるうるした目で、大知をにらんだ。
「あれを見ろ。」
と、裕介は指をさした。
「えー?なんにもないじゃ……」
大知は息を呑んだ。
粉々にされたギターが転がっていたのだ。
「俺の愛用していたクリスティーンが粉々になっている!これも運命なのか!」
大知は唖然としながらも、ギターを見つめた。
いや、クリスティーンというべきか。
「お前さー、いっちゃ悪いけど、新学期早々いじめられてねーか?」
「そのようだね。」
裕介は、クリスティーンを見つめた。
裕介は、また涙をためた。
「おい裕介!お前が泣くのなんてらしくないぜ!らしくな……なぁ?!」
そこには、粉々になったクリスティーンをさらに粉々にしようとしている女子達が群がっている。
「おりゃおりゃ!もうこんなギター見たくも無い!」
「私も見たくない!こんなきっしょいギター初めて!」
大知は唖然とその場を見つめ、裕介の肩をなでた。
「裕介、お前何をした?」
「別に…俺の好きなあんなちゃんのためにラブソングを歌ったら…」
裕介は声を上げて泣いた。
大知は静かにこういった。
「お前、ナルシストだからいじめられてるんだよ。」
「俺は…なにもナルシストなんかじゃない…」
華と爽良は、同情していいのやら、ばかにしていいのやら、複雑な気持ちだった。
でも華は…静かに笑っていた。
4月2日。
裕介の泣き声とともに新学期が始まった。